熊とヒルにおびえながら三国峠、法師温泉へ~白砂山から三国峠(3)
9/28 ムジナ平避難小屋~稲包山~三国峠~法師温泉
(前回の続き)
昨日はずっと足が濡れていたせいか、足が冷たくてよく眠れなかった。真夜中に我慢できず、ザックの中の物を全部出し、冬山でやるように寝袋ごと足をザックの中に突っ込んで、なんとか足が落ち着いた。
しかし、まだ眠れなかった。避難小屋の床は板張りで硬い。今回、エアマットは持ってきておらず、100均の台所用銀マットを敷いているだけ。さらに連日のトレーニングのやりすぎで体脂肪率が5%台になっている。寝返りを打つたびに、どこかの骨がゴリゴリと床に当たり、痛くて目が覚める。
3時くらいから目が覚めていたが、避難小屋を利用しているのは私だけではないので、なんとか4時まで我慢する。そして、4時に起床、さっさと朝食を取り、支度をして外に出る。
快晴無風、雲海が広がる。小屋の中は寒いが、不思議と外のほうが暖かい。手袋もいらない。
群馬県の今日の天気予報は晴れ。快適な1日になりそうだ。
昨日行った水場の分岐を通過し、セバトノ頭を超え、笹原に切り開かれたトレールを熊鈴を鳴らしながら駆け下る。
トレールの先にはガスが。雲海に突入する。
快適な稜線歩き終了。
セバトノ頭の先でガスに突入し、昨日と同じ、ずっと景色がない。雨が降っていないことだけが救い。1776m峰のあたりで樹林帯に突入。
1776m峰の下りは、急斜面の灌木の猛烈な藪を切り開いた道。重い積雪でパックされたシラビソの、枝や根が複雑に絡まった藪。道がなければ、地面に足を付けることもできない木登り状態。道ができる前にここをトレースした者は、この藪と何時間も格闘したことだろう。
遠くからでもよく目立つキノコ。おそらく猛毒御三家のドクツルタケ。
7時ちょうど、三坂峠分岐。核心部終了。
下草が湿っていて、ゴアアマのズボンと靴はびちょびちょ。実は昨日小屋で一緒だったカップルは、小屋につくなりヒルがついていると言って大騒ぎしていたので、濡れた下草に警戒して走ってきた。でも幸いにしてヒルはいないようだ。
ひたすらガスで視界のない稜線をたどり、蜘蛛の巣に難儀しながら、稲包山山頂到着。
上越国境の展望台と呼ばれる山で、期待していた。でもなんにも見えません。太陽がどこにあるかもわかりません。
せっかくなので、ザックを下ろして小休止。
稲包山から三国峠へと向かう途中で、ガスが切れてきた。下界は晴れているようだ。
登山道に送電線巡視路が頻繁に交差する。巡視路のほうが登山道よりしっかり刈払いされている。巡視路を示す道標がちゃんとついているので、迷うことはない。
稲包山からキワノ平ノ頭への途中で送電線が上越国境を超える。巨大な鉄塔がはるかかなたまで立ち並ぶ。柏崎刈羽原発から神楽にある奥清津揚水発電所を経由して、東京に電力を供給する大動脈、新新潟幹線と南新潟幹線だ。
振り返ると、一瞬雲が切れ、今日歩いた稜線が見えた。
暑いのでゴアアマを脱ぐ。笹が濡れていて、ズボンがビショビショになるので、ここまで暑いのを我慢して履いていたが、限界。
ひと登りして、本日最後のピーク長倉山。
山頂を示す道標が壊されている。
これは...これが噂に聞く「熊パンチ」か。
木の支柱には大型の動物の爪痕が残り、ネジやプラスチック版には長い獣の毛が絡みついている。
恐ろしい...
現在時刻は10時1分。
13時までに法師温泉に下りようと思い、早く歩きすぎた。時間が有り余っている。
熊パンチの横に腰を下ろし、残っている行動食をむしゃむしゃ食べ続ける。
長倉山からひとっ走りで三国峠。
時間が有り余っているので、少し休む。
ここから谷川への国境稜線はトレース済み(「快晴のトマノ耳~谷川岳から三国峠(1)」)。
三国峠から群馬側の上越橋の登山口に、よく踏まれた道を下山する。
途中、ぶなの巨木の森を通る。紅葉が素晴らしいところだ。
上越橋の登山口に到着。
これは作業道か何かにしか見えない。入山する時はわかりにくいな。
国道17号を少しだけ歩いて、法師の沢に沿った送電線巡視路を利用した遊歩道に下りる。
沢沿いのなかなか味わい深い道だ。しかし例の奴がいる。
ヒルだ。
それもうじゃうじゃ。
気を付けて歩いていたので、すぐに分かった。
草が道を覆っているところが数か所あって、そこには、1cmくらいの可愛いサイズのヒルがいる。
草の葉っぱにもいるし、地べたにも何匹もはっている。
足早に通り過ぎ、安全地帯に出ると、靴の上に上がってきたやつを、片っ端から指で弾き飛ばす。
丹沢のナメクジサイズのやつとは違って、張り付き力が弱いので、簡単にとることができた。
逢初の滝。ゴールはもうすぐ。
11時34分、法師温泉にゴール。13時までにつけばよかったのだが、だいぶ早かった。
法師温泉長寿館は、法師温泉の一軒宿。国指定の有形文化財。100年以上前に建てられた法師乃湯の湯屋は、鹿鳴館様式だそうで、どっしりとした梁が渡された、高い天井が印象的。湯船の底からぷくぷくと温泉が湧きだしている。
ちょっとぬるめの柔らかいお湯が、雨に濡れ、風に打たれた体を癒してくれる。
入浴のみだと1000円だが、コロナの影響を受ける地域経済に貢献するため、ちょっとだけ奮発して山菜ごはんの昼食がついた3000円のセットにした。
バスの本数は少なく、次は15:35だ。しかし、食事のセットにすると、バスの時間まで食堂でお茶を飲みながらゆっくりと過ごせる。
谷川からならいつもなら普通列車で帰京する。しかし、この今は濡れた靴を一刻も早く脱ぎたくて、上毛高原駅から新幹線に乗って急いで帰る。
参考:
ムジナ平避難小屋5:38-7:00三坂峠分岐7:11-7:58稲包山8:20-10:01長倉山10:23-11:34法師温泉
(白砂山から三国峠・完)
赤星山もおといこさんも地元で親しまれている山のようですね。調べてみたら行ってみた…