日本百名山・至仏山と私~尾瀬ヶ原、至仏山(4)
10/4 見晴キャンプ場~竜牛十字路~山ノ鼻~至仏山~鳩待峠
(前回の続き)
森林限界線を超えると、なだらかな斜面がつづく。
ただ、岩がツルツル滑る。これが蛇紋岩か。
前方が大きく開け、なんだか頂上が近い雰囲気。
おお~、だいぶ上がってきたぞ。尾瀬ヶ原を見わたす、すごい景色だ。
晴れていたらさぞや美しかろうに。
山頂が近いと思って急な階段を上りきると、そこは山頂ではなく、また目の前に山頂らしき出っ張りが見える。
それを何度も繰り返す。
やっとこさ、至仏山山頂到着。
ん?至仏山山頂ではなく、「至仏山頂」とある。「至仏山」ではなく、「至仏」が正式名称なのか?それとも「至仏山いただき」と読むのか?
まあ、どちらでもよい。
風が冷たい。フリースを羽織って、腰を下ろして行動食を食べる。
至仏山の山頂からは360度、遮るものない展望。
北方を眺める。スキーで行った平ヶ岳への稜線が続く(「残雪の尾瀬から平ヶ岳へ」)。途中、幻のススケ平の湿原もよく見えている。その稜線は、白砂山から国境稜線、巻機山と続く長大な稜線と大水上山で合流し、さらに越後駒ケ岳へと続いている。
「百の頂に百の喜びあり」
「日本百名山」で有名な深田久弥の言葉だが、どの山にも忘れられない思い出がいっぱい詰まっている。
と、そのとき、背後で拍手の音がした。山頂の標識の前に人が集まり拍手をし、写真を撮っている。
どうやら、今、この至仏山が最後の100座として百名山登山を達成したらしい。5年で達成したとのことだ。
私が登った百名山は、60から70くらいではないかと思う。ちゃんと数えたことがないから分からない。百名山登山を否定するわけではなく、目標をもって山に登るのは楽しいと思うが、自分はあまり興味がない。
百名山にはすばらしい山が多く含まれているのは事実。しかし、1965年という、現在とは様々な状況が異なる時代に、深田さんが自分の基準で選んだ山々にすぎないことも事実。
百名山を登りきるには、相当の時間とお金と労力が必要だ。そこに力を入れると他の素晴らしい山々に気づかないかもしれない。とりあえず今のところは、私は自分の百名山を探し続ける。
さて、鳩待峠に下山するか。
南下する稜線にトレールが続く。トレールは途中で左に折れ、たどり着いた鞍部が鳩待峠だ。
正面にかすんで見えるのは、武尊だろう。魅力的な沢や山スキールートがある。近いうちに行きたいものだ。
始めは、岩がゴロゴロしている走りにくい稜線の細かいアップダウン。そして長い階段とともに下り始める。
トントンと軽快に駆け下りたいところだが、登ってくる人も多いので、ゆっくり下る。
見事な紅葉。その後ろは昨日歩いた稜線。そしてその後ろは、おそらく日光白根山から尾瀬に続く稜線。
笠ヶ岳分岐に到着。
湯の小屋温泉から笠ヶ岳経由で、至仏山を目指したことがあった。この笠ヶ岳分岐に到着した時には、雨が強く、至仏山は断念して鳩待峠に下った。雨に濡れた木道がツルツル滑り、斜めになっている木道に恐怖したことをよく覚えている。
山と高原地図には、笠ヶ岳分岐の下に「涸れることあり」という水場が記されている。それがこれ。確かに細い流れだ。
尾瀬ヶ原最後の展望。さようなら、尾瀬ヶ原。またいつか会う日まで。
至仏山の東斜面の紅葉はきれいだな。美しい自然の中、気持ちよくトントンと進む。
ここで気づいた。今から全力で走れば、予定したバスの一本前の10:20のバスに乗れるのではないか?
いや、せっかく尾瀬に来たのだから走ることはない。ゆっくり行こう。
でも、山は前倒しのほうがなんかあったときに安全だ。どうせ樹林帯に入るのだから走ろう。
いやいや、でもでも、、、。自問自答を繰り返し、とりあえず走り出す。
走り出したのはいいが、前方から団体さんが次々と登ってくる。何度も道のわきによけて、通り過ぎるのを待つので、思ったほど進めない。
やばいぞ、苦労した挙句、バスが出た直後に鳩待峠につくのだけは避けたい。心の中で冷や汗をかきながら、すれ違う人々に笑顔でこんにちは~、と挨拶をする。
最後の1キロはレース並みの本気度で走る。
ゼーゼー、ハーハー肩で息を弾ませて、10:15に鳩待峠に到着。なんとか間に合った。切符を買って出発2分前にバスに乗り込んだ。
尾瀬戸倉でバスの乗り換え。今日は、ここから高速バスで帰京するので、バス停近くの戸倉温泉で汗を流す。建物は大きいが、10人も入ったらいっぱいになってしまいそうな小さな温泉だった。
いい気分で温泉からでると、入り口で数人ほど待っていた。人が多くなってきたので入場制限をしているそうだ。
ああ、走って早いバスに乗った甲斐があったというものだ。
バスが来るまで時間があるので、バス停のはす向かいの食堂「健太」で昼食とする。とりあえず、かつ丼と生中を頼むが、ふと横を見ると立派なマイタケが...うまそう...。山菜天ぷらの盛り合わせを追加で頼む。
山菜天ぷらの盛り合わせ、もちろんマイタケの天ぷらも入っている。
山菜天ぷらと言っても、タラの芽とかコゴミとかがちょこっと入っていて、あとは普通の野菜の天ぷらでお茶を濁すパターンが多い。しかし、ここはしっかり正真正銘の山菜の天ぷら。山菜もマイタケもうまい!ほろ苦い天ぷらをつまみに、ビールが進む。
客が次々とやってきて、じきに満席になった。やっぱり早いバスに乗ってよかった。
健太の隣は、酒屋の「玉木屋商店」。地域振興も兼ね、永井酒造の純米吟醸「水芭蕉」を買う。甘い果物の香りの透明感のある日本酒だ。
山に登って、温泉に入って、いっぱい食べた。あとは、バスに乗ってそのまま東京に運ばれるだけ。
充実した週末だった。
参考:
見晴キャンプ場5:28-7:07山ノ鼻7:11-8:44至仏山9:04-10:15鳩待峠
(尾瀬ヶ原・至仏山 完)
至仏山の登り(山ノ鼻~)は、塔ノ岳の大倉の登りと似たような急登に感じました。
(2~3時間の急登なら、個人的に好きだったりします)
マイタケの天ぷら+ビール、至福ですね。
確かに塔ノ岳と似ていますね。
しばらく樹林で、やがてバーッと展望がひらける。
そう考えると、谷川の西黒尾根も同じような感じですね。