青空の下、草原の道を平標山へ~谷川岳から三国峠(3)
11/5 越路避難小屋~平標山~三国山~法師温泉~猿ヶ京温泉~後閑駅
(前回の続き)
笹が風にあおられるザザザーという音と、ドアの外で木を引っかくようなガリガリという音が一晩中聞こえていた。おまけに夏用のペラペラシュラフは足が寒く、ぐっすり眠れなかった。
明け方の4時にたまたま目が覚め、小屋の扉を開けて外を見る。よかった、ガスはかかっていない。空は晴れわたり満天の星空だ。オリオン座が目に飛び込み、冬の大三角を縦に貫く冬の天の川も見える。そしてオリオンの脇から流れるエリダヌス座を目で南へと追う。地平線へ隠れたその先には日本からは見ることができない南天の星、アルケナルがある。今年の正月にフエゴ島で見た星空を思い出した。
小屋の戸を閉め、朝食の準備に取りかかる。賞味期限を三年すぎたインスタントのパスタだ。腹をこわすことはないだろう…
星の数が数えられるくらいになったころ出発。しばらくは細い尾根を下ってゆく。両側は漆黒の深い谷で、まるで底知れぬ闇の中に下りて行くようで、ちょっと不気味。
日光白根のあたりから日が昇る。気温は5℃くらいあり、11月としては破格の暖かさだ。
朝日が山々を照らしはじめる。国境稜線は100~300mくらいの微妙なアップダウンが続く。目の前に見えているエビス大黒ノ頭なんて、地図上ではちょっとしたでっぱりにすぎないが、こうして見るとなかなかかっこいい山だ。
今日最初のピーク、エビス大黒ノ頭に到着。カサカサという笹の音が聞こえるだけ。1人っきりの夜明けのピーク。何にもない。いつもこんなときは定家の
見渡せば 花も紅葉も なかりけり 浦の苫屋の 秋の夕暮れ
を思い出す。でも今は、花も紅葉もないのは同じだが、さらに苫屋もなければ夕暮れもない。本当に何もない…。なんで山に登るのか考えてみる。
仙ノ倉山への登りにかかり、歩いて来た稜線を振り返る。だいぶ来たな。太陽もだいぶ高くなった。暑くなって上着を脱ぐ。
お約束の山頂パノラマ撮影。仙ノ倉山はなだらかな山だ。スキーで滑れそうな斜面がいっぱいある。今度の春はここに来よう。今年、震災で思い切り滑れなかった分を取り返そう。
仙ノ倉山から平標山へはなだらかな草原の道。夏はキスゲやギボシが一面に咲く花畑だが、今は単なる枯れ草の原。でも風が吹き抜ける草原の道を歩くのは気持がいい。
(次回に続く)
おはようございます。さりげなく登場させて頂き有り難うございました。出版等のお仕事をされているのでしょうか。文章、写真など、流石です。これからも山、旅、復興ボランティア等頑張ってください。ホームページ、時々覗かせて頂きます。
仙の倉で出会った方より~
追伸。5月の連休に高崎シティーギャラリーで「絵画3人展」を企画中。作品テーマは「私が歩いた山々」です。
泉さん、
コメントありがとうございます。
仙ノ倉ではいろいろお話をさせて頂いて、枯れ草山の思いがけない思い出になりました。
山や旅先で、仕事は出版関係?とか旅行会社?とか聞かれることがあるのですが、素人です。
本や他の人のHPを見て試行錯誤しています。
山で絵をかかれるんですね。
かっこいいですね。