長き道のりの果て、石鎚山~東赤石山から石鎚山(6)
11/6 瓶ヶ森キャンプ場~土小屋~石鎚山~山頂成就
(前回の続き)
登山道から瓶ヶ森キャンプ場がよく見える。天空のキャンプ場だな。
石鎚山は崖に囲まれた、岩山。多くの桟橋が渡されている。
石鎚山がどんどん大きくなってきた。
山肌は笹に覆われているが、もちろん刈払いはばっちりで、快適な道。
快調に飛ばして汗ばんできたので、ザックを下ろしてフリースを脱ぐ。
ついでに腹ごしらえと、行動食の袋をあさるもブラックサンダーばかり。昨日からずっとブラックサンダーなので飽きた。と、袋の底に弁当の醤油のような袋に入ったMCTオイルがあった。
MCTオイルは中鎖脂肪酸という油の一種で、普通の植物油や動物性油脂と違って、小腸の門脈に吸収され肝臓で代謝され、すばやくエネルギーとなる。
食事にカロリーを追加するために持っているのだが、直接飲んでもいいんじゃないか?と、すすってみる。
うげ~
中鎖だろうが長鎖だろうが、油は油。口の中が油でギトギト。思わず、水で胃に流し込む。
山肌にへばりつくように桟橋は続く。
だんだん胃がムカムカしてきた。胸やけだ。
私は胃が強い方で、胸やけしたり吐いたりしたことは、人生の中で数えるくらいしかない。しかし、MCTオイルはすぐにきた。
気持ち悪いよ~。
石鎚神社の表参道と合流。
合流点のそばに、休憩所があり、立派なトイレがある。
MCTオイルが胃を通過した。気持ち悪さの感覚でわかる。このまま小腸で吸収されてくれればよいが。
石鎚山山頂へのルートは、巨大な鎖が有名だ。しかし、迂回路を使う。ザックがパンパンなので、一眼レフカメラを肩から下げ、ザックに入りきらなかったものを、外にぶら下げている。これで鎖を登ったら、よくてカメラがぼこぼこ、下手したら、鎖の途中でザックが引っかかって、身動きが取れなくなるかもしれない。
それにしても、この高度感あふれる階段。よくつけたねぇ。
まずい、お腹が変だ。MCTオイルは小腸で吸収しきれず、大腸まで行ってしまったようだ。
ひたすら階段を上り、石鎚山の山頂に到着。
あ~、東赤石山から長い道のりの果て、やっと石鎚山にたどり着いた。
山頂はハイカーで賑わっている。
三日間歩いた道のりを振り返る。
笹に覆われた瓶ヶ森がよく見える。そこから写真の右端に延びる稜線を、今日はここまで歩いてきた。瓶ヶ森のすぐ右側には、昨日登った伊予富士。瓶ヶ森のすぐ左には、笹ヶ峰。
ますます、まずい。トイレに行きたくなってきた。
油を飲んだら吸収されずに、口から尻まで潤滑油を流すに等しい、ということを学びつつある。
そして問題はこれ、天狗岳。石鎚山の最高点は、この天狗岳の山頂。鎖の張られた岩場のルートだ。
行きたいけど...途中でもよおしそうになったら打つ手がない。
アイランドピークのアタック(「アタック・キャンプへ」)のことを思い出した。あの時は、氷壁を懸垂下降で降りている途中でもよおしてきた。尻に力を入れ続け、アタックキャンプまで数時間耐え続けた。でも今日は、潤滑油が入っているので、あの時よりも緊急性が高い。
石鎚山からさらに東、堂ヶ森へと続く稜線。堂ヶ森まで行ってそこから保井野に下山する計画だった。でも予定よりちょっと遅れているので、本数の少ないバスに間に合うかが微妙。
それより今は、堂ヶ森よりもトイレに行きたい。
ひと通り景色を堪能したので下山を開始する。最初の目的地は、合流点のトイレ。
登ってきた階段をガコガコ駆け下る。階段は左側通行。谷側には手すりがないので、転んだら、そのまま落下。行きはよいよい帰りはこわい。
人の声がする方を見上げると、鎖にしがみつく人が見えた。
大きな鎖。でもここは鎖がなくても登れそう。
一目散に合流点のトイレへ駆け込む。
助かった。ここにトイレを作った人は、先見の明がある。
MCTオイルは、普段はSleep Lowトレーニングをするときに、夕食のカロリーを補うためにスープに入れたりして使っている。しかし、そのまま飲んではいけないということを身をもって学んだ。
ザックを下ろして休憩。ホッとした。ブラックサンダーでも食べよう。
表参道をロープウエイ駅のある山頂成就へ下る。
夜明峠で石鎚山を振り返る。岩にへばりつくように、トイレや神社が建っている。
試しの鎖。
石鎚山に登る人は、まずここで鎖に登れるか試してみるのか。
下るほど、紅葉が濃くなってゆく。八丁坂周辺の紅葉が素晴らしい。
石鎚神社の鳥居をくぐる。ゴールは近い。
石鎚神社中宮。ほぼゴール。広い境内で迷子になりかける。
ここは中宮。山頂にあったのは、奥宮。では、本社はどこにあるのか?なんと、海岸に近いJR石鎚駅の近くにあるそうだ。本社から奥社まで参拝するのは大変だなぁ。
発車間際のロープウェイに飛び乗る。
山肌はちょうど紅葉の盛り。
ロープウエイ山麓駅の寂れ感がはんぱない。売店のおじさんも、最近はロープウエイに乗る人が減った、と言っていた。コロナで拍車がかかったに違いない。
山麓駅からほど近い、石鎚山温泉。
「平成生まれの石鎚山温泉」という看板が時代を感じさせる。ここも寂れ感満載で温泉設備もレトロだ。シャンプーもないよ。
でも温泉はやっぱり温泉。いいもんだ。心と体にしみる。
食事をしたい。さっきの売店のおじさんに食事ができる場所を聞くと、温泉の横の食堂でできるかもしれない、とのこと。「かもしれない」ってなんだ?
誰もいない、大きな食堂の戸を恐る恐る開けて、食事ができるか聞いた。うどんなら、ということでうどんを注文。
なんということのない、かけうどんだったが、関東のうどんとは違う四国のうどんの味がした。
バスで伊予西条駅、そして鉄道に乗り換え、松山駅へ。松山についた時には、すっかり暗くなっていた。そこから混雑する路面電車に乗り換えて松山の中心、大街道で下車。今宵の宿、カンデオンホテルへ。最近は、仕事でも旅行でも、温泉付きのビジネスホテルが第一候補だ。
夕食は、地元で人気の居酒屋で一杯やろうといくつか目星をつけていた。しかし、驚いたことに、どこも満席で入れなかった。東京の繁華街は、コロナの営業自粛で閉まっている店が多く、人通りそのものが少ないが、松山の繁華街はとても賑わっている。別世界のようだ。
困り果てて、ホテルのフロントで松山の名物が食べられる店を紹介してもらった。観光客相手の店で、ややお高く、なんでもありの店だ。でもやっぱり鯛飯はうまい。
参考:
瓶ヶ森キャンプ場6:09-7:25シラサ峠7:36-9:06土小屋9:23-11:05石鎚山11:15-11:32公衆トイレ11:43-13:29山頂成就
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(次回に続く)
赤星山もおといこさんも地元で親しまれている山のようですね。調べてみたら行ってみた…