岩場を越え、山燃ゆ銅山峰ヒュッテ~東赤石山から石鎚山(2)

11/4 瀬場~東赤石山~銅山越~銅山峰ヒュッテ

前回の続き)

道は前赤石山の中腹まで尾根沿って登り、そしてトラバースとなる。
途中、尾根に向かって、岩土交じりの急斜面を直登する踏み跡を右に分ける。かなりの急傾斜なので踏み跡というより、よじ登り跡か。テープがついている。前赤石山の山頂を越える尾根通しのルートも取れるということなのでたぶんそれだろう。ちょっと行ってみよう。

クライムダウンできることを確認しながら、慎重によじ登っていく。

20211104 前赤石山の山頂

岩稜に出て、ちょっと進むと前赤石山の山頂。思った通り。
この先は細いリッジが続いている。懸垂下降したとの記録も読んだので、先に進むのは控え、来た道を戻る。

20211104 前赤石山の岩壁のトラバースの始まり

先ほどの分岐にもどって、トラバース道を行く。どんどん道は細く、心もとなくなる。
そして、樹林が切れ、これから行く岩壁が見えた。

ん?道はどこだ?

どこに道があるか全然わからない。とにかく先に進もう。

20211104 前赤石山岩壁のトラバース

岩壁の基部に広いバンドがあって、そこに踏み跡が続いていた。
左側が切れ落ちており、また、バンドが細くなったり岩がのっかっていたり、ちょっと怖いところもあり、危険であることは違いない。しかし、クライミングの技術も不要で、おおむね道である。

歩きやすいところを、ポンポンと調子に乗って歩いていたら、高いところに追い上げられた。
まばらに生えている灌木にはテープがついている。しかし、このまま進むと指数関数的に傾斜が増し、ダイレクトに尾根に出そうだ。正解ルートは物住頭の手前のコルまでトラーバスしているはず。

20211104 前赤石山の物住頭手前

振り返って、来し方、そして下の方を眺める。
ペンキの白丸のように見えるのは、地衣類だ。幾筋ものガレがルンゼを埋めて、下に続く踏み跡のように見える。と、下の方に、狭いテラスのように平らに岩が積み重なっている場所が見えた。おそらく、人が踏んで岩が平らに積み重なっているのだろう。
ビンゴ!、行ってみると小さなケルンがあって、そこから大きな岩をまわりこむと、踏み跡が続いていた。

ふと、長次郎の頭から北方稜線を歩いた時のことを思い出した(「劒岳<ちょっとだけ点の記>~八ッ峰・剱岳」)。あの時も、鉛色の雲の下、岩尾根でルートファインディングをしたっけ。もちろん、難易度は全然違う。でも、一人で右往左往するのは、また別の緊張感がある。

20211104 物住頭

物住頭でトラバースは終わり、尾根道に戻る。もう今日は緊張するところはない。すっかり手がかじかんでしまった。手袋をする。
トラバースを始めてから終わるまで、ルートファインディングした時間を含めても、20分くらいだった。意外と短かった。

20211104 物住頭からの紅葉

前赤石山を越えたら、紅葉が鮮やかになった気がする。

20211104 西赤石山を目指す

次のピークは、目の前の西赤石山だ。緩やかな尾根道が続いている。遅れた時間を取り戻すため、走る。今日、初めての走れる道。

20211104 ところどころ岩が混じる

だいたい走りやすい土の道だが、ときどき岩場になる。こういうびみょ~に斜めっている岩ってやだな。

20211104 南側の山並み

縦走路から見た、南側、つまり四国内陸部の景色。彼方まで幾重にも山並みが重なる。送電線鉄塔が見えるが、目に入る人工物はそれくらい。東京近郊ではありえない景色だ。

20211104 西赤石山

西赤石山の頂上で、今日3人目の登山者に出会った。
足元からとび出す狸にも会った。

20211104 西赤石山から銅山越え方面

西赤石山を越えれば、今日はもう下る一方。目的地にほど近い、銅山越えの分岐も見えている。
初冬の陽は、3時を過ぎると弱々しく寂しげだ。日没前には銅山峰ヒュッテにつきたい。走り続けよう。

20211103 西赤石山から来し方を振り返る

ふと、来し方を振り返る。歩いた稜線を一望する。前赤石山の岩壁もよく見える。
今日もよく歩いたな。

20211104 新居浜の街

そして、右手にはずっと新居浜の街。

20211104 銅山越

銅山越まで下ってきた。
1702年から184年間、別子銅山の粗鋼は、人夫によってこの峠をを越えて新居浜まで運ばれていた。山の厳しさにより行き倒れるものも多かったという。その無縁仏を弔ったのが、このお地蔵さんだ。

20211104 銅山越の道標

交通の要所は道標でいっぱい。エスケープルートに乏しい法皇山脈にあって、ここからは新居浜側にも筏津側にも比較的早く下りられる。
今日は、ここで主稜線を離れ、銅山峰ヒュッテまで少し下る。

20211104 銅山峰ヒュッテまでの石畳と落ち葉

稜線直下が、ちょうど紅葉が真っ盛り。日が陰った薄暗い石畳の道を駆け下る。

20211104 銅山峰ヒュッテ直前の分岐

うわ、道標がいっぱい。鉱山開発でつけられた道がいっぱいある。

20211104 銅山峰ヒュッテに到着

やっと着いた。燃えるような山の中にたたずむ銅山峰ヒュッテ。
時刻は16:10。日没までまだ1時間ある。最後がずっと走れたので思ったより早く着いた。

サイト場の許可をもらおうと、入り口をノックしたり、大声でこんにちは、と小屋の周りで声をかけたり。5分くらいしてやっと気づいてもらって、おばあさんが出てきてくれた。
ここは、宿泊者を泊める山小屋だが、そもそもはおばあさんの自宅で、おばあさんがひとりで住んでいる。道路に出るにも山道を1時間ほど歩かなければいけない。山が好きな私でも、不安でこんな山奥にたったひとりで住めない。
でもおばあさんはここが一番落ち着くそうだ。もはや、おばあさんが山の一部になって、私の達しえない悟りの境地にあるのだろう。

20211104 夕暮れの新居浜の街

今日、ずっと見えていた新居浜の街にも夕暮れがやってきた。

20211104 銅山峰ヒュッテのテントサイト

テントを張ってしまえば、もうあとはダラダラするだけ。
シュラフに足を突っ込んで、バランタインをチビチビやりながら、夕食の準備。と言っても、軽量化のためアルファ米+フリーズドライのカレーだけだけどね。
そうそう、甲斐駒での失敗(「黒戸尾根を越えよ!~甲斐駒ヶ岳から夜叉神峠」)を繰り返さないために、ガーミン先生にもモバイルバッテリーでご飯をあげよう。

20211104 新居浜の夜景

夜はかなり冷える。関東から見ると四国は南国のイメージだが、山の寒さは大して変わらない。寝る前にトイレに行っておこう。
トイレに行く途中で、新居浜の夜景をパチリ。

参考:
瀬場登山口10:35-12:15第2徒渉点先1380m 12:20-12:58東赤石山-13:46石室越13:51-14:07前赤石山-14:35物住頭14:40-15:07西赤石山15:12-16:10銅山峰ヒュッテ

次回に続く)

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