小笠原だけの植物たち~小笠原諸島の旅(5)
5/1 母島・石門
(前回の続き)
崖から森に戻る。石灰岩の露岩の割れ目から立派な「オガサワラグワ」が生えている。名前のとおり固有種。オガサワラグワは黒く硬く重い木で、磨くと黒檀のように黒光りする。それで装飾用として珍重され乱伐されてしまったため、大木が非常に少なく切り株ばかりが目につく。
倒れた木の幹は朽ちてしまったものの、その樹皮から新しい緑が芽吹いている。石門の森の木々はたくましい。あるものは倒れて新芽を出し、あるものは倒れて朽ちて次の世代に場所をゆずる。はるか昔からその営みが繰り返されている。
午前中に山を覆っていた霧も午後には切れ、陽の光がさしてきた。しかし、うっそうとした森は昼なお暗い。
石門山は海底より隆起した石灰岩の山で、地上のあちらこちらに石灰岩が顔を出している。この石灰岩は雨により浸食され、靴底に穴が開きそうなくらい鋭く尖った、ゴジラの背のギザギザを並べたような形になる。これをラピエと言うそうだ。
また森が突然開け崖っぷちに出た。ここからは東港が見渡せる。東港には戦前には集落があったそうだが、今は無人だ。
これはその名も「セキモンノキ」。まさに世界中、ここ、石門にしか生えていない木。
そしてラピエにへばりついているこれは「セキモンウライソウ」。これもここにしかない。
これは「ムニンシュスラン」。やっぱり小笠原の固有種。花は3月までらしく枯れた花ばかりだったが、この株はたまたま開花が遅く花を見ることができた。
ガイドさんが辺りの木や草を見ながら、次々と名前を言う。そしてどれもこれも小笠原の固有種だ。小笠原だけの草木が茂る不思議の森だ。
予定の時間ギリギリの3時半に登山口に戻ってきた。ふと道路の脇を見ると、出発前は分からなかったが、ここにも教えてもらった小笠原だけの植物が茂っているのに気付いた。
ツアー終了後、ガイドの早川さんの農園を見学させて頂き、早川さんと奥様から島の話や、将来の大きな夢の話を聞かせていただいた。
と、なんだか視界の隅をチョロチョロしているやつがいる。緑色のトカゲ、グリーンアノール。ペットとして島に持ち込まれたが、島固有の昆虫を食いまくり絶滅に追いやっている。
早川さんの農園にも小鳥の水場があった。やっとここで母島にしかいない鳥、メグロを撮ることができた。雀くらいの大きさで、名前のごとく目の周りが黒い。
お話をうかがっているうちに日が沈んだ。南国の日暮れは暗くなるのが早い。あ~、充実した一日だった。
(次回に続く)
赤星山もおといこさんも地元で親しまれている山のようですね。調べてみたら行ってみた…