暴風の中、チレーノへ~チリの旅(12)
11/18 ロス・クエルノス~チレーノ~トレース・デル・パイネ(往復)
(前回の続き)
テントの中で一晩中、何かの叫び声のような風音と、テントにパラパラと打ち付ける雨の音を聞いていた。
目が覚めて、テントから頭を出すと、そこには大きな虹が見えていた。
カメラを持って外に飛び出す。
旅先では必ずと言っていいほど虹を見るのだが、今日の虹は色も濃く、二重に見えていて特に立派だ。
あの虹の付け根はどうなっているのだろう?
小雨の中、湖岸へ駆け下りて行った。
虹の末端は薄くなって、湖面に消えていた。
坂を登り、キャンプ場に戻る。
湖からは水蒸気か靄が立っているように見える。しかし、これは、水蒸気ではなくて雨だ。
強い雨がとても狭い範囲に降っていて、それが水蒸気のように見える。
小屋で朝食。パンに卵にコーヒー。
近くに座った初対面の人と話をしながら食事。
だいたい、どこからどこへ行くのか、という話題になる。しかし、私の場合、ここでも必ず、日本からここまでどれくらい時間がかかったか聞かれる。
ランチボックスを受け取り、台所で水をもらって出発に備える。
八時半に小屋を出る。
出発した時は、パラパラと雨が降っているだけだったが、すぐに真っすぐに立っていられないほどの風と、前を向いていられないほどの激しい雨となる。つらい…さすがパタゴニア。
湖にも海のように波が立っていた。
雨は、時々雪に変わり、吹雪となる。手がかじかむ…つらい。
鼻水がとまらなくなってきた。
チリ紙を出したら一瞬でびちゃびちゃになってしまうだろう。私の知り合いで、チリ紙を使わずにうまく鼻をかむ人がいる。まねてみようかと思ったが、失敗すると大惨事になるのでやめた。
鼻をすすりながら、風にあおられ、よろよろ歩く。
暴風雨の中、百合(たぶん)が咲いていた。
揺れないように茎をしっかり手でつかみ、写真を撮る。
トレッキングルートとホースライディングのルートが並行して走っている。
こんなところは特に風が強い。ゴウゴウという風の轟と、ゴアアマのフードがバタバタいう音しか聞こえない。
赤い花がいっぱい咲いている。
この木の陰に潜り込むようにして、風を避けながら一休み。
橋のない沢を渡る。
こんな道標で風に飛ばされないのかな、と思いつつ渡る。
道は湖をはなれ、台地を登ってゆく。沼地のようになった道を泥と格闘しながら進んでいくと、突然、雨が止み晴れ間が出てきた。
腰を落ち着けてランチとしよう。
ランチボックスには、チキンサンド、りんご(持ってきたのと合わせて4つになってしまった…重い)、チョコバー、袋入りのナッツ(これもふた袋になってしまった…)が入っていた。
台地の上をチレーノのあるアスセンシオ川に向かって歩いてゆく。広々として気持ちのいい所だ。遠くには、前回テント泊したラス・トーレスが見える(パイネ国立公園へ)。
道に泥の塊がたくさん落ちている。なんだろう、とよく見てみると馬糞だった。
赤いマフラーをした鳥。しきりに穴の中を突っついている。
アスセンシオ川の谷に入る。ザラザラの斜面につけられた道、この先にチレーノの小屋がある。そしてそのさらに先には、今回の旅のメインイベント、8年越しのリベンジ、トレース・デル・パイネがある。
しかし、山々は雲に覆われている。谷の奥まで天気は回復していないようだ。
チレーノの小屋がなかなか見えてこないと思ったら、あんな谷底にあった。
ずるずるとザレた道を下ってゆく。
(次回に続く)
赤星山もおといこさんも地元で親しまれている山のようですね。調べてみたら行ってみた…