無風の山頂~五竜岳(2)
5/5 西遠見山~五竜山荘~五竜岳~西遠見岳~五竜とみおスキー場
(前回の続き)
朝。夏用のペラペラシュラフだったが寒くなかった。と言うより、むしろ暑かった。起きてシュラフから出ても寒くない。テントから外に手を突き出してみるが、空気が生暖かい。氷点下まで気温が下がらなかったようだ。
テントをたたみ、不要な装備を雪面に掘った穴に詰め込んで、五竜岳のサブに出発。もわ~っとした大気の向こうに朝日が昇る。
明け方は薄曇だったが、だんだん空が晴れ上がってきた。目の前に白岳沢の真っ白な大斜面が広がる。登るのがしんどそうだ。そしてお目当ての五竜岳も岩峰一つ一つが手に取るように見える。
朝日に赤く染まる鹿島槍を期待していたが、明け方は薄曇だったので見えなかった。でもなんとなく赤っぽく見える。
雪面はいたるところで稜線と平行に割れて、深い口をあけている。雪の下を流れる水の音も聞こえる。日が昇ったばかりだというのに、すでに雪が融け始めている。不気味…
白岳の斜面をできるだけ直登する。雪は腐っているが歩きにくいほどではない。ただ、ところどころ割れているので、足をとられないように気を使う。
5分もしないうちに暑くてジャケットを脱いだ…
雪はグサグさの腐れ雪。場所によっては一度融けて凍ったツルツルの氷。歩きにくい。
おそらくこれがG1G0。雪が切れ、ちょっとした岩場をアイゼンをギシギシいわして通過する。稜線に立ってみれば、反対側はすっぱりと切れ落ちて高度感抜群。
この岩のピョコの向こうには五竜の山頂が見える。そこまでには、遠目には雪壁のように見える雪のつまった急なルンゼと、その上をトラバースする不気味なトレースが見える。
トラバース帯に突入。近くで見ると思ったほど傾斜はない。雪も柔らかいので歩きやすい。しかし、ところどころ融けた雪がガラスのように凍っており、足を滑らせれば誰にもじゃまされることなく、谷底までの旅を堪能することになるだろう。
トラバースの途中で、鎖を打った岩が雪から頭を出していた。左手で鎖をつかみ、アイゼンを氷に効かせたまま、体を後によじって、なんとか写真を撮った。
トラバース帯を無事通過。もうゴールは目前。五竜岳の頂上直下の雪壁を登る。夏ならばちょっとした岩場だが、すべて雪の下なので傾斜は急だが登りやすい。
雪とにらめっこしながら雪壁を登り、ちょっとした雪庇をのっこすと、急に目の前が開けた。山頂はすぐそこだ。
着いた。山頂は無風快晴。目の前に剣が大きく見える。静かだ、鳥のさえずりと雪崩の音だけが聞こえる。
驚いたことに山頂も暑い。夏でも使える薄手の手袋をしているが、それでも暑いくらいだ。なんだかコーラが飲みたくなった。冷たいコーラが飲みたい。飲みたい飲みたい言って、メンバーにもコーラが飲みたい気分を伝染させる。
(次回に続く)
赤星山もおといこさんも地元で親しまれている山のようですね。調べてみたら行ってみた…