奥秩父の道なき主稜線を歩く~和名倉山から竜喰山(2)
10/22 将監小屋~竜喰山~前飛龍~サオラ峠~のめこい湯
(前回の続き)
うとうとと浅い眠り。目が覚めて時計を見るとまだ22時。テントを出てトイレに行く。風はなく寒くない。明日の天気は晴れのはずだが星は見えない。
テントに戻ってお湯を飲みながら、取り忘れていた今日の記録をメモする。
外では鹿や正体不明の獣の鳴き声。
シュラフに潜り込んで、またうとうとと浅い眠り。地面が若干左に傾いて、体が徐々に左に滑っていくのが気になる。
3時半には完全に目が覚めてしまった。しばらくじっとしていて、4時にシュラフから出る。明け方にもかかわらずやっぱり寒くない。テントに夜露もおりていない。ありがたい。
朝食をすませ、乾いたテントをたたむ。5時40分、熊鈴を鳴らしながら出発。曇り。うっすらと明るい。
まずは将監峠に登り返す。
今日は、ここから竜喰山、大常木山と縦走して前飛龍から下山する。竜喰山、大常木山は奥秩父の主稜線上にあり、いずれもその名を冠した竜喰谷(「夏の日に楽しく遊ぶ」)、大常木谷という沢が有名である。
しかし、登山道はない。
奥秩父の主稜線上には、金峰山から将監峠まで登山道がある。しかし、それより東の竜喰山、大常木山を含む稜線上にはない。ここから雲取山手前の狼平付近まで、登山道は稜線の南側を大きくトラバースしている。だが、登山道はないと言いつつも、これらの山に訪れる人もぼちぼちいるので、稜線通しに踏み跡があるようだ。
竜喰山のとりつきを示す道標に導かれ、笹薮の中へ。
笹の背が低く、踏み跡がしっかりしているので歩きやすい。夜露がおりていないのも助かる。
尾根をまっすぐに登っていく。気温が高く風もないので、すぐに汗ばむ。
竜喰山の肩に上がると、展望が開け心地よい風も吹き抜ける。足元に将監小屋、そして正面には富士山。
太陽はもう上っているはずだが...どこだかわからない。
竜喰山の山頂は近い。
踏み跡をたどるが、和名倉山の登山道よりよっぽど快適。
この稜線は展望がいい。稜線の下の登山道は、樹林の中の退屈な巻き道だ。
南アルプスも見える。でも、それよりも、たくさんのレンズ雲が気になる。晴れと言っていた天気予報は大外れだな。
山頂到着。森の中。木々の合間からの展望あり。
竜喰山から先は、倒木があったり、獣道が多くなったり少し歩きにくくなる。それも奥秩父らしいか。右手には、大菩薩や富士山がずっと見えている。
紅葉はすでに終わりかけている。でも、ちょっと残ってた。
シャクナゲの藪が出てきた。
大常木山が近づくと岩稜になる。岩稜の直登や巻きと踏み跡が錯綜する。
左右に切れ落ちた岩峰を、ちょっとしたクライミング気分で越えていく。シャクナゲの藪がうるさく、ザックに引っかかって登りにくい。
一つ一つ岩峰を越えていく。2つめの大きな岩峰が大常木山の山頂のはず。
あれ、あれれ?岩稜が終わっちゃった。山頂はどこ?1つ1つもれなく岩峰を登ったはずだが...気が付かなかった。
振り返っても、そこにはただ、藪に覆われた岩稜があるだけ。
あ~、残念、しくじった。
岩稜が終われば、また踏み跡に従って、縦走路が交わる大ダルまで一気に下る。
大ダルは紅葉が見ごろ。ザックを下ろしてアンパンを頬張る。昨日頑張りすぎたので、大腿四頭筋が疲労し、足の上げ下げがだるい。
ここから飛龍山まで踏み跡が続いているならば、それに従って飛龍山に登ろうと考えていた。しかし、薄い踏み跡がシャクナゲの藪に突入しているのを見てやめた。登山道を行こう。
前飛龍の手前に、はげ岩への分岐がある。5分かそこらなので絶対に行くべし。
はげ岩は稜線から飛び出た展望台。言わば奥秩父のスカイテラス。
360度とまではいかないが、300度くらいの展望。富士山だけでなく奥秩父の主稜線も見渡すことができる。
一番手前の稜線が、さっき歩いてきた竜喰山から大常木山。大常木山の山頂はたぶんあれだな...。
その奥には、昨日、死に物狂いで走った稜線。和名倉山はやっぱり大きい。
飛龍権現の分岐。左に行けば、飛龍山の頂上だが、特に見るべきものはないのでパス。前飛龍経由で下山するために右へ。
前飛龍へは、ちょっと岩っぽい尾根を下る。下るにしたがって、だんだん紅葉の色が濃くなっていく。
前飛龍の山頂の先にある露岩からの展望も第一級。これから行く道、その向こうに先週ハセツネで走った山々が見える(「第30回ハセツネCup参戦」)。
足元に紙が落ちてる。と、見てみると、岩岳尾根の道は登山道ではないので、自己責任で行ってください、と書いてある。
前飛龍から露岩交じりの急な尾根を少し下ると、なだらかな、落ち葉がふかふかの紅葉の森となる。気持ちよく走る、と言いたいが、足の筋肉の疲労が激しくほどほどに。
紅葉の熊倉山でひと休み。
あ~、すばらしい。森が美しい。前回来た時(「奥秩父へ足をのばす」)の、生命感あふれる初夏の森もいいけど、やっぱり秋はいいな~。暑くないし、虫もいない。
もしもし、誰かいますか?
シカの食害のせいだろうか、下草がほとんどない。目立つのは、トリカブトの花。
サオラ峠。ここからダイレクトにのめこい湯に下山。もうすぐ温泉に入れるぞ~。
もうすぐが長かった...急斜面に付けられたジグザグのトラバースルートが永遠と思えるほど続く。足にくる。
でかいキノコ発見。
登山口に到着。ここで時間が気になってきた。バスが2時間に1本くらいしかないので、遅れるとえらいことになる。
熊鈴をしまい、のめこい湯まで道路を走り続ける。
のめこい湯。今、11時5分。バスは12時4分。なんとか温泉に入れる。
残念ながら食事をしている時間はなく、空腹のまま奥多摩駅行きのバスに乗る。奥多摩駅のまわりで食べればいいや。
しかし、奥多摩駅についてみれば、奥多摩駅周辺の数少ない飲食店には、どこも入口に人が並んでいる。う~ん、なんで夏でもないのにこんなに人が。しかたなく、駅のそばの酒屋で海苔巻きを買って、ホームのベンチで腹に詰め込んで電車に乗る。
長年の懸案を解消したのはいいけれど、終わりと、そう、大常木山のピークを逃したのが残念な山行だった。
(和名倉山から竜喰山、完)
参考:
将監小屋5:40-6:56大常木山手前鞍部7:07-7:59大ダル8:08-8:34はげ岩-9:43熊倉山9:48-11:05のめこい湯
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赤星山もおといこさんも地元で親しまれている山のようですね。調べてみたら行ってみた…