静寂の別世界、金峰山山頂~甲武信岳から金峰山(3)
1/5 国師岳~大弛峠~朝日岳~金峰山~金峰山荘
(前回の続き)
今日も凍えるように寒い朝だった。でも風は全くなく静かな朝だ。出発して10分ほど登ると、そこはもう国師岳山頂へ続く平坦な稜線の一角。今日も茜色の富士山に「おはよう」と言う。
さて、国師岳の山頂までもうひとふん張り。木々に覆われ、朝日に照らされた山頂がすぐそこに見えている。
唐突に樹林帯を抜け、そこだけ木の生えていない国師岳山頂に到着。私の地図には「国師岳」と書いてあるが、道標には「国師ヶ岳」とある。どちらが正しいのだ?
山頂からは南側の展望がよく、甲斐駒ヶ岳から北岳が手に取るように見え、そしてずっと南へ南アルプスのすべての峰々を目で追うことができた。
今回最大の難所。国師岳から大弛峠ヘは雪の積もった木道と階段が続く。ワカンを履いているため、これが実に怖い。たっぷり雪が積もった階段は、まるで滑り台のよう。ただ滑ってくれればいいものの、ワカンがあっちこちに引っかかる。そして、踏み出した一歩の下が階段と木道の繋ぎ目の隙間だったりして、雪を踏み抜いて落とし穴のようにはまる。
山頂から一段降りると前国師岳。国師岳山頂より展望がよく、南アから中ア、御岳、乗鞍に北アの山々まで見える。
こけつまろびつ、やっとのことで大弛小屋に到着。本当は昨晩はここに泊まる予定だった。管理人はいないが無人小屋として開放されている。ここは奥秩父のもっとも深い場所。さすがに冬に営業するのは大変なのだろう。
大弛峠の林道を横切りまた樹林に突入。はじめ、トレースがなく、このラッセルでは金峰山にはたどり着けないかもしれないと意気消沈するが、すぐに蛇行するトレースと合流。どうも金峰山のほうから来た登山者が、ルートを決めきれず右往左往しながら大弛峠に下りて来たのだろう。
急斜面の深い雪に足をとられながらふと後ろを振り返ると、さっきまでいた国師岳がだいぶ遠くなっていた。
朝日岳山頂。大弛峠からの稜線は、それ以前と違ってやや細いところが多く、樹林帯でも木はスカスカで明るく見通しがよい。木々には小さいながらも海老の尻尾がついている。今日は風は全くないが、いつもは強い風が吹き抜けるのだろう。
スカスカの木々の向こうには富士山も見える。
さて、金峰山は近い。山頂にぴょこっと突き出た五条岩がはっきり見える。元気に出発!と言いたいところだったが、もともと調子の悪い左足が、歩幅の合わないつぼ足トレースを踏み潰すようなラッセルでダメージを受けてしまった。申し訳ないことだが仲間に先に行ってもらって、足を引きずりながらよろよろとついてゆく。
だんだん斜面がゆるく、木々の背丈が低くなり空が大きくなる。クリスマスツリーのような針葉樹は、まるで会津か吾妻の山にいるかのような風景。とても東京近郊の山とは思えない。さあ、金峰山の山頂はほんのすぐそこだ!
森林限界線を越えると雪のドーム。一歩一歩山頂に近づく。心配していた風もなく、自分が雪を踏む音だけが聞こえる。果たしてこの写真を見て金峰山だと思うだろうか?雪の金峰山は以前にも来たことがあるが、こんなんじゃなかった。何度でも来てみるものだ。
五条岩の手前からのパノラマ。完全に360度の展望。歩いてきた奥秩父の山々、富士山、南ア、中ア、八ヶ岳、北ア、雨飾から妙高連山、浅間など北信の山々、そして雪深い上越の山々…風の音さえ聞こえない静寂の山頂を、白い峰々が幻のように取り囲んでいる。すばらしい、来てよかった。
山頂を越えると舗装されたかのようにしっかりとトレースがついている。ワカンからアイゼンに履き替える。
頂上直下の道標には30cm近い海老の尻尾がついていた。
もうあとは下るだけ。金峰山小屋の白い屋根を目指して急な斜面を駆け下る。
金峰山小屋から先はまたひたすら樹林。石楠花の多いところだが、夏は通せんぼをするかのように威勢よく葉を広げている石楠花が、今はまるで破れ傘のよう。
途中で40人ほどの団体とすれ違う。ツアーのようだ。いくら天気がいいとは言え、日が傾きつつある雪山なのに、手袋をしていない人もいてかなり危なっかしい。
西股沢まで下りると、今度はタクシーの来る金峰山荘までのうんざりする林道歩き。凍った林道を冬山用の硬い靴でひたすら歩く。アイゼンが傷む…苦行だ…第2の難関だ…。
金峰山荘で林道の途中から電話で呼んでおいたタクシーに乗り、一昨日、川端下に止めた車に戻る。そしてタクシーの運転手さんおすすめのパノラマの湯へ。3日間、寝るときもニット帽をかぶっていたので、スギちゃんそっくりのワイルドな髪形になっている…。露天風呂は残念ながら真っ暗でパノラマは見えなかったが、熱いお湯が冷え切った体を芯まで温めてくれる。さいこ~!でも指先がジンジンして痛い…。風呂をでたら食堂で腹ごしらえ。無性に肉が食べたくて、ボリュームたっぷり「名物八ヶ岳ステーキ丼」を頼んだ。肉は普通だがタレとご飯の相性がばっちり。
今回のコース
より大きな地図で 2013/1/3-5 甲武信岳~金峰山(Kobusi-dake – Kinpu-san) を表示
赤星山もおといこさんも地元で親しまれている山のようですね。調べてみたら行ってみた…