長年の片思いが叶う~西吾妻・大沢下り

3/2 天元台スキー場~明月荘~砂盛のコル~大沢駅

長年恋焦がれ、しかし、何度アタックしても叶わない片思いのような山の一つや二つは誰にでもあろう。
私にとって、その一つは西吾妻の大沢下りだった。

4度ほど、登山口の天元台まで行ったことがある。しかし、天気に恵まれなかったり、間抜けにも車で道に迷ったり(「西吾妻・若女平へ」)して、一度も実現していない。

そして性懲りもなくリベンジ。天気予報も大沢駅への道の除雪状況もしっかり確認し、満を持して大沢駅に向かった。

夜半に無事に大沢駅に到着。車中で一夜を過ごし夜明けを待つ。

大沢駅

スノーシェッドの中の、産業遺産ともいうべき大沢駅。ここにはかつて、スイッチバッグがあったが、今は廃止されている。
車を下山場所となるこの大沢駅にデポし、我々は電車とバスで、登山口の天元台スキー場に向かう。
米沢駅から天元台までは、以前来た時は普通のバスだったが、マイクロバスになっていた。そこに、スキーを持った人たちがギュウギュウに詰まって天元台へと運ばれていった。

天元台スキー場

天元台スキー場のリフトでゲレンデトップに向かう。風はほとんどなく、陽射しは暖かい。雪は少なめで、ゲレンデのロープウエイ駅の入り口は地べたが見えていた。

ゲレンデは滑っている人も少なく、まったりとした感じ。これで経営が成り立つのか...

中大巓へトラバース

リフトを下りて、中大巓へやや左にトラバース気味に登る。トレースはしっかりついている。
前回(「西吾妻・若女平へ」)よりほぼ一ヶ月早いが、すでにモンスター(樹氷)は消えている。

北の山々

ちょっと靄がかかっている。でも、なかなかいい天気だ。蔵王から朝日連峰の山々がよく見える。

中大巓から藤十郎へ

稜線に出る。
この広い尾根は視界がないときは、ルートファインディングが極めて難しく、さらに悪天のときは、某登山家がグリーンランドより厳しいというほどの突風が吹く。
しかし今日は、行く先がはっきり見え、ぽかぽか陽気のスノーハイキングだ。ただし、雪はかなりしまっていて、まるでゲレンデのよう。

道標も顔を出している
道標もしっかり顔を出している。雪は少ない。

藤十郎から東大巓

なだらかな藤十郎のピークを打ち、次のポイントは明月荘。正面に見えているのは東大巓。東大巓の手前の台地で尾根をはずれ、明月荘を目指して左にトラバースする。視界がないと、尾根をはずれるポイントとトラバース具合が難しく、明月荘を見つけられないこともあると聞く。今日は問題なさそう。

明月荘へトラバース

夏道の分岐の手前の台地で、明月荘に向けてコンパスを切って、トラバース開始。明月荘自体は樹林に隠れて見えない。
先行パーティーは、トレースを追って我々の下方をトラバースしているが、あれは下りすぎだ。

明月荘が見えてきた

ビンゴ!明月荘にぴったりと着地。

雪に埋もれる明月荘

先行パーティは登り返しているため、我々が一足早く明月荘に到着。
小屋の中で、休憩。おにぎりタイム。

明月湖周辺

明月荘からは砂盛コースをとる。まずは北西に進む。明月湖周辺は湿原=雪原になっていて、ドロップポイントの見極めが難しい。コンパスを切って進むが、なぜか相棒は右へ右へと引き込まれる。追っかけて確認すると、地図に磁北線を引いていなかった...。この辺りは地図読みができないと、悪天時には厳しいだろう。

クジラの大斜面へ

ドロップポイントからクジラの大斜面へ。初めは樹林。やがて、見晴らしのいい台地になる。
のんびり滑っていたら、後から来たパーティーに抜かれてしまった。バージンスノーが...

忠ちゃん転ばし

雪崩の事故も起きている急斜面、忠ちゃん転ばし。でも今日は、雪がゲレンデ並みにしまっているので、躊躇なく滑り降りる。

砂盛への登り

忠ちゃん転ばしを過ぎると林道にでて、橋を渡る。このまま林道を行ってもいいのだが、実はもうひと滑りできる。橋を渡って、林道が大きなカーブをした先の沢状で、シールを貼って砂盛のコルを目指す。
先行パーティーは、一つ手前の尾根を登って、大騒ぎしている。

砂盛のコルから滑降

時間に余裕があるので、砂盛のコルで長めに休憩。
そして、ドロップイン。北斜面にふんわり積もった雪を巻きあげながら、最後の滑りを楽しむ。今日一番いい雪だ。

ここからはしばらく林道沿いに進む。とはいっても、途中の蛇行する林道を馬鹿正直に滑る必要はなく、林道を無視して樹林の中を橋まで真っすぐに滑ることができる。

吾妻山麓牧場

突然、ゲレンデのように開けた場所に出る。吾妻山麓牧場だ。遮るものは一切ない。ターンを刻む必要もない。全身に風を受けながら、斜面に身を任せて雪原を突っ切る。

つかの間の快楽が終わると、うんざりする林道が始まる。雪が切れているところもあり、枝や石ころが散乱しているところもあり、単調ながらも気が抜けない、脛が疲れる滑りが続く。

大沢駅への分岐

単調林道に頭がぼーっとしてくる頃、左手に大沢駅を示す小さな道標が。これを見逃すとえらいことになる。現に、相棒は見逃してまっすぐ行ってしまった。大声で呼び戻す。

ここから右の狭い林道に入り、林の中を藪をかき分け滑る。

大沢駅手前の線路跡

林から道に抜けた。と思ったら、廃止されたスイッチバックの跡だった。大沢駅はもうすぐそこ。

無事に車を止めてある大沢駅前に生還。最高のコンディションの中、長年の片思いだった大沢下りの完遂が叶った。
ただ、また来たいかといわれると...。林道が長すぎる。

米沢の平安の湯

米沢の平安の湯で汗を流す。
ちょっと不思議な温泉である。帽子禁止。建物はマンションみたい。そして、昭和を思わせるボロさ(でも清潔感はある)。
半露天風呂からは、雪が残る田んぼが広がる田園風景、その後ろを取り囲むような雪山、そしてそこに沈みゆく夕日と茜色の空。
なかなか素晴らしい湯だった。

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