グリーンランド氷床上空いらっしゃいませ!~アイスランド&グリーンランド(23)
8/15 カンゲルルススアーク~コペンハーゲン
(前回の続き)
グリーンランドとの別れの朝。腹いっぱいのオートミールを食べ外に出る。雲ひとつない晴れわたった空、グリーンランドに来てはじめてのすがすがしい朝…グリーンランドは朝はいつも雨かと思っていたよ。気温は10度ほどしかないが、陽射しが強く日なたは暖かい。すでに上はヒートテック1枚の下着状態。
宿の送迎バスで空港へ。出発3時間前につく。早すぎ、誰もいない。空港のまわりをうろうろと散歩する。これはアウトドアツアーの会社かな。
時間をもてあまし、街外れの丘に上がる。カンゲルルススアークはフィヨルドに流れ込む川沿いにあり、空港を取り囲むようにポツポツと建物がある。今回は滑走路のはしっこあたりの宿に泊まったので、街の中心には行けなかった。でももしかしたら空港ターミナルビルが中心かもしれない。
空港のターミナルビルに直結したホテルのテラスにて。搭乗案内を待ちわびる人々。滑走路はすぐそこ。ホテルのテラスの横には公園があって、地元の子供たちが遊んでいる。どれがホテルの入り口でどれが空港の入り口だか区別がよくわからない。すべてがいっしょくたんで敷居がとても低い。
フードコートをのぞいてみると…「ムスクバーガー」なるもの発見。ジャコウ牛のハンバーガーだ。さっそくレジで注文し、ポケベルのような呼び出しのブザーをもらってテーブルで待つ。日本のSAなみに進んだ仕組み。さて、巨大バーガーと山盛りフレンチフライがきた。バーガーは普通。でも牛肉のバーガーより脂肪分が少なく、あっさりちょっと硬め。オートミールでガポガポの腹に無理に押し込む。
やっと30分前に搭乗開始。グリーンランドエアーの唯一のジャンボジェットに乗り込む。エンジンが近い。
ほぼ定時、11:40に出発。いったん西に飛び立った機体は大きく旋回して、東へ向かう。無数の湖をちりばめた茶色と緑の大地が徐々に氷河に覆われてゆく。昨日来たグリーンランド氷床の端っこにやってきた。
眼下は一面の氷に覆われた。氷河の上には毛細血管のように枝分かれした無数の川が見える。そしてその水を集めた湖は空の色。
グリーンランド中央部に差し掛かる。飛行機の窓から外を眺める。下半分が真っ白で上半分が真っ青。はじめ雲の上を飛んでいるのか、雪原の上を飛んでいるのか分からなかった。そのうち、下のほうに雲があらわれ、その影が雪面に写っていた。これで、自分が今眼下に見ているのが雲ではなく、一年を通して融けることのない、標高3000mのグリーンランド氷床中央部の雪原だとわかった。雪原はヒビ一つない完全な白、完全な平面に見えた。
雪原は突如として終わり、鋸の歯のような山が連なる山岳地帯となった。グリーンランド東部は3700mの最高峰を筆頭に3000mを越える山々が連なる山脈が続く。氷河と絶壁の未踏の山々。ため息のでるような絶景が続く。グリーンランド上空にいらっしゃい!
東海岸が見えてきた。グリーンランドの町はほとんど西海岸で東海岸には2,3しかない。その理由が今わかった。急峻な山岳地帯がそのまま海に落ち込んでいる。街ができるような平野は全く見当たらない。
グリーンランドを離れ北大西洋へ。大海原のど真ん中に巨大な氷山がポツリと浮いている。グリーンランドの一部だった氷山は氷河から切り離され、大西洋を海流に乗り北上する。そして徐々に融けて小さくなり消えてゆく。二度と戻ることのない孤独な旅だ。なんか切なくなってきた。
再び陸地が見えてきた。アイスランドだ。アイスランド最大(ヨーロッパ最大)のヴァトナヨークトル氷河はグリーンランドの白い氷河と違い、灰色でべったりと地面を覆っている。あの氷河の端っこをカリカリと歩いていたのはつい一週間前のことだが、なんだかずっと遠い日のような気がする。
再び大西洋にでて、次に見えてきた陸地は畑に覆われたまっ平らなユトランド半島、デンマークだ。コペンハーゲンに向けて機体は徐々に高度を落とす。それにつれて地面が近くなり、畑のあちこちに風力発電機の列が見えてくる。
国際空港のあるシュラン島とスウェーデンとの間の海峡には、海上に巨大な風力発電機の列が並びゆっくりと羽が回っている。夕日にきらめく海にはたくさんのヨットやカヌーが浮かんでいた。日本は衰退している。この瞬間に痛感した。日本は20年来の経済の沈滞にあえぎ、さらに原発事故にも見舞われ、それでも激しい抵抗に遭い変わることができない。しかし、ここデンマークでは高コストの再生エネルギーの開発を着実に進め、それでも人々は夕暮れにヨットやカヌーを楽しんでいる。財界人は円高や高い法人税のために優秀な人材や企業が海外に流出すると言う。でもそれよりも、決められない政治家、石頭の財界人、優秀な人たちはそんなものに愛想をつかして海外に流出するんじゃないだろうか。
空港からコペンハーゲン市街まで鉄道を使う。改札がなく切符を買って何のチェックもなく列車に乗り、列車から下りる…どうなってるんだろう?予約したホテルのあるコペンハーゲン中央駅で下りる。人が多く賑やかだ、でも暗い。日本で言えば東京駅みたいなところだが、駅前も暗い。街灯が少ない、ネオンや看板がほとんどない。日本ではほとんどの原発が止まっているために、電力需給が危機的だと騒いでいる。きっと街灯やネオンが煌々と輝く、日本の街をデンマーク人が見たら笑うだろう。
(次回に続く)
湖に空の映る様はすがすがしくて気持ちのいい写真ですね
1枚目の写真がとても好きです。
その岩の表面は層がでているのかなぁ
氷河も何もかも、太古の時代のものが今もこうしてきれいに残されている自然の姿に感動します
わたしは一度も日本を出たことの無い化石人間なので、本当に感動します
桃苺さんこんばんは、
岩のしましまは、岩の地層?がそのままでています。
崖に露出している岩も、こんなしましまが100mくらい続いていたりします。
グリーンランドでは地球最古の岩や、はじめて陸に上がった両生類の化石まで、
ありとあらゆる石が発見されていて、天然の地質博物館と言われるらしいです。