カンゲルルススアークからグリーンランド氷床~アイスランド&グリーンランド(22)
8/14 イルリサット~カンゲルルススアーク(グリーンランド氷床)
(前回の続き)
機内は自由席なので左の窓際の席をとる。しかし、離陸してすぐに雲に突入し何も見えず。飛行機は雲の上に出ることなく青い空も見えない。景色が見えてきたのはカンゲルルススアーク空港への着陸の直前になってからだった。
カンゲルルススアーク(カンゲルスアック、カンガルスワック)はグリーンランドの居住地には珍しく、大西洋の海岸から100kmほど内陸に入った場所にある。しかし、それでも海岸にある集落である。巨大なフィヨルドが内陸100kmまで進入し、その最奥にカンゲルルススアークはある。「カンゲルルススアーク」とはグリーンランド語で「大きなフィヨルド」を意味する。(そのまんまやん!)カンゲルルススアーク空港はジャンボジェット機が離発着できるグリーンランドのハブ空港だ。
横殴りの雨の中無事に着陸。まるでバスの荷物のように機内から荷物がポイポイ下ろされていた。
宿の送迎の車で空港から宿へ。そしてすぐにグリーンランド内陸の氷床のツアーを申し込み出発。ぜひ内陸氷床は行っておきたかった。事前に調べてもツアーの状況がわからず不安だったが、直前申し込みであっけなく参加することができた。トラックのようなダートを走るためのバスに乗る。空港がすっぽり納まるほどの広大な河原をもつAkukiarusiarsuupKuua川に沿って、ガコンガコン揺れながらひたすら内陸にむけて進む。
AajyuitsuoTasia湖の湖畔にゲートがあった。このゲートから先はイヌイット(グリーンランド原住民)の地。湖の向こうにRussels氷河が見える。グリーンランド氷床の端っこだ。
バスはガコガコ揺れながら坂道を登ってゆく。氷河から流れ落ちる滝や、激しい水煙を巻き上げる滝などが見えるのだが、バスの激しい揺れと窓に吹き付ける雨でまともな写真が撮れない。残念。と、運転手がバスをとめ遠くを指差す。おお、でかいジャコウ牛が草を食んでいる。写真のモレーンの山の下に黒い塊として写っているが分かるかな?
遠くに見えていた氷河がだんだん大きくなる。そして、右の窓から見える景色がすべて氷河の崖になる。でかい。氷河の崖の高さも2、300mはありそう。右前からずっと後まで視界の120度くらいを占めている。理科年表で鉱物の表に「氷」があるのを不思議に思ったことがあったが、ここでは氷も岩も大した違いはないようだ。
道路の終点でバスを下りる。標高500m、すでに先ほど見た氷河の崖の上にいる。黒い泥で覆われた地面の上を、ドライバーについてさらに内陸に歩いてゆく。氷河から冷たい強風が向かい風となって吹きつけ、正面から真横に降る雨で、雨具を着ていても顔はびしょびしょになる。みんな一言も発せず、黙々と歩いている。
やがて黒い泥がなくなり、足元はツルツルの氷になった。間違いなくグリーンランド氷床の上に立った。グリーンランド氷床はグリーンランドの内陸部を覆う氷河で、面積は日本のおよそ5倍、地球上で南極氷床に次ぐ大きな氷の塊だ。氷の厚さは500~3000m、氷床の中心部では標高は3000mに達し一年を通して氷が融けることはない。そしてその中央部では岩盤は氷の重みで沈み、海面より低いところにあるという。その想像を絶する不毛地帯の一端に立つことができた。
ドライバーが行ける所まで行っていいというので、ツルツル滑って転びそうになりながら、360度氷に囲まれるところまで行って見た。この先は数百キロにわたって氷しかない大地が広がっている。チュニジアでみたサハラ砂漠を思い出した。砂漠の入り口から見た砂丘の先には数百キロにわたって砂しかない大地が広がっていた。その砂を氷に変えれば、この延々と連なる丘の形も含めて砂漠と氷床はとてもよく似ている。全く異なるのは、氷の上には川や池があること。今年は異常気象で特に氷河の融雪が激しいらしい。
砂に覆われた地面の下から黒い岩のようなものがのぞいている。しかしこれは岩ではない。透明な氷だ。岩の地面に思える場所でも、その表面をこすってみると氷が現れる。光が当たらないために真っ黒に見える。この足の下も数百mの氷なのだ。
雨と風で体もカメラもびしょびしょになってバスに戻る。ここでホットコーヒーとクッキーでティータイム。ナイスタイミング。そしてバスはカンゲルルススアークの街を目指してきた道を戻る。氷河のすぐそばに湿原があった。モレーンの岩屑の山の間に緑に覆われた湿原があるのはとても不思議。
雨が小降りになり氷河湖のほとりで撮影タイム。それにしてもでかい氷だな。氷だけじゃなく花の写真でも撮るか、と思って探したが例のごとくワタスゲしかなかった。
夜が短くて寝不足のせいか振動のせいか、ダートで揺られると条件反射で寝てしまうようになった。ドライバーの声で起こされ、分けも分からず車から下りる。目の前には押し流された大きなコンクリートの橋があった。街外れにある洪水で破壊された橋を見にきたらしい。こんな橋は東北でたくさん見た。橋を見るのはあまり気が進まず、とりあえず濁流の川の写真を撮る。
“Old Camp Hostel”の欠点は街の中心まで遠いこと。宿はカンガルスアック空港の滑走路の先端付近にあり、そこから最寄のレストランまで2kmもある。しかたがないので、夕暮れの薄ら寒い道をトボトボと歩く。道沿いにイルリサットにはなかった木が茂っている。そう言えばドライバーがここには森(Forest)があるって言っていたっけ。でも私にはどうしてもBush(藪)にしか見えないが…
ひたすらトボトボと歩き続ける。カンゲルルススアーク空港は米軍の空港も兼ねている。そのためか空港のまわりにはいろいろな施設がある。
お腹がいっぱいになり、ワインでいい気分になったものの、また2kmの寒い道のりを歩いて宿に戻る…。道はずっと崖沿いに付いている。地図を見ると標高差は200m以上。土も苔もほとんどついていないむき出しの岩なので、そのままクライミングが楽しめそうだ。
やっと宿に着いた。時間は10時近い。深夜の夕暮れを見るのも今日が最後だ。
(次回に続く)
見えますね、ジャコウウシ
遠目にも頭から肩にかけて盛り上がっている様子がわかりますね!
光の届かない氷は黒水晶みたい
一面の氷を歩いて、カツカツ、コツコツと氷が鳴るのが聞こえてきそうです
グリーンランドの雨!わぁああ冷たそう!!
桃苺さんこんばんは、
ジャコウ牛はじつは寄り添うように2頭います。
目ではちゃんと草を食んでいるのが見えたのですが、うまく写せていないのが残念です。
氷の上はカツカツよりツルツル滑って、転ばないように歩くのでひと苦労でした。