氷河の音を聴く~アイスランド&グリーンランド(20)
8/12 イルリサット~Eqip氷河~イルリサット
(前回の続き)

氷のかけらで覆われた海をさらに氷河に近づいてゆく。
ぐるりと見回す。青い氷の崖に囲まれている。

動画で氷河の端から端まで撮ろうとしたそのとき、たまたま氷河の一端が崩れた。雪崩というか土砂崩れというか…見た目はそれほどでもなくても、かなりの大音響。山で聞いたらかなりビビリそうだ。
海に浮いていた氷河のかけら。口に入れるとプチプチする。冷たい。数万年前の味。当たり前だが塩辛くはない。
また崩れた。陽射しが強いためかかなり頻繁に崩れている。崩れ落ちた氷の塊が轟音とともに水しぶきを上げる。そして、氷が落ちた海が山のように盛り上がり、氷をうねらせながら波となってこちらに向かってくる。やがて船は大きく揺れる。氷河から離れているので、そんなに大きい崩壊には見えないが、少なくとも十メートルはある氷の塊が海に落下しているようだ。なんと言ってもこの崖の高さは100m以上あるのだ。
氷河の真ん中が岬のように突き出ている。この岬がちぎれて巨大氷山になるらしい。
氷河のお勉強のためにガイドさんが一生懸命、氷河のかけらを拾っている。

船のエンジンを止める。静寂が周囲を包む。しかし、耳を澄ますと、プチプチ、あるいはポップコーンがはじけるようなパンパンという音が聞こえる。氷河の氷に閉じ込められ圧縮された空気が、氷が融けるとともに数千年、あるいは数万年ぶりに外に飛び出す音だ。
まるで翡翠の彫刻のように冷たく蒼く美しい。
船のエンジンが再びうなり出す。帰るのかと思ったらすぐ横の陸地に接岸した。ここは”Camp Eqi”と言ってこのツアーを主催する会社が所有するロッジがある。このロッジに泊まって、夕日に照らされる氷河を見るのもいいな~、内陸氷床へのトレッキングもいいな~、と思うが宿泊費はとんでもなく高い。
船は出力を全開にし氷河を後にする。これから5時間かけてイルリサットへ戻る。海の色は青、というより碧(みどり)だ。グリーンランドと言う名はこれじゃないかと邪推する。そして、私の顔の色は日焼け止めを忘れたので真っ赤っか。
我らのボートはグリーンランド周遊中の大型客船を抜く。
まだまだ日没まで5時間以上あるが、太陽は低くなんとなく夕暮れの雰囲気。氷山も行きとは違う顔を見せる。またこれは変な形…。変な形の氷山はひっくり返ってできるとのこと。
Camp Eqiで乗せたツアー客を下ろすために、イルリサットの北の集落Oqaatsutに接岸する。細い、本当に細い岩の岬の上に20件ほど家が建っている、というよりのっている。海面からの高さは1mもない家もある。やっぱりここは常に波がないのだろう。波があったらみんな押し流されそうだ。
氷山の合間を漁船が走る。イルリサットは近い。
イルリサットに戻り、またスーパーに行って夕食の準備。調味料を買ってもあまらせてしまうので買わない。味付けに苦労する。今日は豚肉のローストのトマト煮込み。豚肉は1パックしか買っていないが、皿に山盛りになってしまった。
一昨日は夕日を見ようとして雨に降られたが、今日はなんとかいけそうだ。あわてて目をつけておいた世界遺産エリアの海沿いの丘に上がる。だんだん空が茜色に染まる。
結局、日は左側の雲の中に沈んだ…夕日は見られず。でもこの氷山が浮かぶ夕暮れの海は十分美しい。
日が沈み、ただでさえ寒いのにもっと寒くなる。宿まで20分の道のりを急いで歩く。途中、十字架の並ぶ墓地の傍らを通る。キリスト教なのか。
(次回に続く)
赤星山もおといこさんも地元で親しまれている山のようですね。調べてみたら行ってみた…