ケルンを積みトレッキング、そして白熊を喰らう~アイスランド&グリーンランド(21)
8/13 イルリサット(Inussunnguaq周辺)
(前回の続き)
今日はKANGIAフィヨルドの奥、はるかイルリサット氷河を臨めるだろうとあたりをつけた、Inussunnguaq という丘までトレッキングする。情報は手元の10万分の1の地図のみ。ざっと往復8時間と見積もる。涙が出るほど冷たく強い風が吹いている。気温は5℃くらい。ゴア天を羽織りニット帽、ブレスサーモの手袋と完全武装で出発。
赤ルートから一昨日に来た青ルートの入り江に至る。ここからフィヨルドに沿って東に進むが、ルートは整備されていない。苔の上につけられた踏み跡と、心もとない10万分の1ハイキングマップ、コンパスだけがたよりだ。
踏み跡は錯綜している。地図と照らしあわせながらいくつもの岩の丘と浅い谷、湿原を越えてゆく。進んでも進んでも特徴に乏しいデジャブか?と思わせる同じ景色が続く。縮尺が10万分の1と言うこともあるが、視界があっても地図読みが難しい。
湿原にはワタスゲ。アイスランドからここまで、湿原には必ずワタスゲ。ワタスゲってこんなに繁殖力の強い植物だったんだ。
目的の丘が近づくに従って、踏み跡が薄くなり、とうとうほとんどなくなってしまった。完全な岩の丘で土が全くなく踏み跡がつかない。地図を確かめケルンを積みながら進むが、極端にペースが落ちる。と言うのも、丘全体が1つの大きな岩で、石ころが落ちていない。1つケルンを積むにも5分くらい周囲をうろうろして石を探さなければならない。そうこうしている間に空はだんだん雲に覆われ、そして時間も11時半近くなってしまった。丘のトップは遠くに見えているが、13時までに安全圏に戻るにはもう時間がない。しかたない、引き返そう。ここを歩こうと思う人にはGPS持参をすすめる。
おいしそうなきのこがいっぱい生えている。
苦労して積んだケルンのおかげで、帰りは何も考えずにスイスイ戻ることができた。
青ルートの入り江まで戻ってきた。もう街も近いし、ルートもはっきりしているので一安心。入り江に落ちている石はみんなしましま。
天気がまだ持ちそうなので、青ルートに平行に海沿いを走る踏み跡をたどって黄色ルートに行く。大体草原だが、木も生えている。木と言っても膝くらいの高さしかなく、岩にへばりついていたりする。冬の厳しさがうかがえる。
岬の上の丘に氷山を眺めながらずっと座っている人がいた。寒くないのかな…
青コースから別れ、黄色コースに入る。黄色コースは海沿いに街に出る。黄色コースの丘の上からイヌイット居住地跡を見下ろす。
黄色コースは海岸沿いの岩場のような感じだが、海の波がないためか植生は他の場所と変わらず、湿原がありワタスゲが茂っている。ワタスゲはいささか食傷気味なので、よく見られる地衣類の写真を撮る。
避難小屋発見、かな?土、正確に言うと湿原の泥炭のような植物の堆積物を積んで造った家が建っていた。
発電所の裏から街に出てトレッキング終了。結局8時間以上歩いた。おまけに街中で道に迷う…。イルリサットの家々の前にはボートやスノーモービルがよく置いてある。
食事を終えホテルを出ると、土砂降りだった。しかし、氷山鑑賞ツアーに行かねばならぬ。パンフレットに載っていた、夕日で真っ赤に染まる巨大氷山の写真に惹かれてツアーを申し込んだ。しかし、冷たい雨、強い風、何もかも冷たくびしょびしょ…。夕日どころではない。
船はフィヨルドに入り、巨大な氷山の周りをまわる。差し渡しは数百メートル、高さ数十メートル。氷山の上でスキーをしたり、アイスクライミングをする人がいるそうだ。
今日、丘から見たイヌイット居住地跡を海から見る。氷山の上ではたくさんの鳥が羽を休めている。
西の雲がほのかに赤くなる。たぶん日没。とうとうイルリサットで夕日を見ることはできなかった…
船で西洋人から流暢な日本語で話しかけられてビックリ。東京に20年以上住んでいて、日本の会社に勤めているそうだ。3週間の休みをもらってグリーンランド、アイスランド、フェロー諸島をまわると言う。3週間の休みか…いい会社だ。
(次回に続く)
参考
- グリーンランドの地図
- イルリサットの10万分の1ハイキングマップが、先に紹介した”World of Greenland”(緑のグリーンランドに上陸)のオフィスで買える。他にもカンガルスアックなど南西エリアの地図を扱っている。英語版とデンマーク語版があるが、この旅を通して英語版はここでしか見なかったので、必要ならここで買っておくこと!
赤星山もおといこさんも地元で親しまれている山のようですね。調べてみたら行ってみた…