雨の剱岳山頂~八ッ峰・剱岳(3)

8/15 剱沢キャンプ場~長次郎雪渓~五六のコル~八ッ峰~剱岳~剱沢キャンプ場

前回の続き)

110815八ッ峰六七のコルへの懸垂ポイントから七峰

六七のコルへの懸垂下降ポイントから進行ルートを見る。板を立てたような岩尾根で、どれがどれだか分かりにくいが七峰、八峰、そしておそらく八ッ峰の頭が見えている。そして七峰の山腹の草付きにトラバースの踏み跡が見える。予定より1時間以上遅れている上に、鉛色の雲が低く垂れ込めてきた。今日は先を急ぎ七峰を巻いていこう。

110815八ッ峰八峰の登り七峰を巻き、七八のコル、八峰へ急なルンゼをずり上がる。落ちたらタダじゃ済みそうもないが、浮石や岩屑の堆積が多く手のやり場に困る。足元からもザラザラと岩屑が崩れ、後続に気を使う。
110815八ッ峰八峰の懸垂ポイントから頭

八峰から八ッ峰の頭の全体を見る。

110815八ッ峰八峰の懸垂ポイント

八峰から頭の基部まで懸垂下降。クライムダウンする人もいるが、かなり厳しい。50mロープ1本で1mの余裕もなくギリギリで下りた。

基部から八ッ峰の頭はどこから登るものだか、登っていいものだか分からず、と言うか気付かず、池ノ谷乗越へ巻いてしまった。左のザレた鞍部が池ノ谷乗越。

110815剱岳北方稜線池ノ谷尾根の頭の登り

八ッ峰を終了して(六、八峰しか登らなかったが…)剱岳北方稜線に出る。池ノ谷乗越に立つと目の前の岩肌にペンキで上向きの矢印が書いてある。おいおい、ここを登れってか。普通はフリーで登るらしいが、ルンゼの中はかなり立っている部分がある上に、浮石が多くもろい。気休めにザイルを出す。右側のリッジを登るパーティーもいる。

110815剱岳北方稜線池ノ谷尾根の頭の雷鳥

登りきった山頂には雷鳥の親子がいた。我々はかなりヒヤヒヤしながら登ってきたが、彼女たちは涼しい顔をしている。

110815剱岳北方稜線池ノ谷尾根の頭から八ッ峰

登ってきた八ッ峰を見下ろす。空を覆っていた鉛色の雲はもうすぐそこまで来ている。時々、ポツリと冷たいものが落ちてくる。予定を2時間以上オーバーしている上に、履いている靴は、履き古して底がフラットソールになりかけた軽登山靴だ。雨だけは勘弁してくれ~。

110815剱岳北方稜線池ノ谷尾根の頭から縦走

池ノ谷尾根の頭から剱岳山頂までルートのはっきりしな岩尾根の縦走。岩は濡れ始め、視界はガスに閉ざされつつある。慎重に進む。

池ノ谷尾根の頭から下ると、稜線の左側に、誰もが言及する危ういトラバースが見えてくる。岩峰を細いバンドを伝って巻くのだが、足元は絶壁、壁がちょっとかぶさり気味な上に、バンドに切り込むルンゼを越えなければならない。心もとないシュリンゲが岩壁にぶら下がっている…

躊躇していると、稜線に忠実に上のほうを歩いている人を発見。そちらに進むと難なく岩峰を通過することができた。

110815剱岳北方稜線長次郎の頭トラバース回避ルート読者サービス。
 岩峰を越えて振り返ったところ。踏み跡に沿って真っ直ぐ行くと危ういトラバース。手前でいったん池ノ谷側に回り込み尾根沿いに進むと、トラバースからの踏み跡と合流する。

悲しいお知らせです。バラバラと大粒の叩きつけるような激しい雨が降ってきました…視界も数メートルしかありません。

デジカメをしまう。泣きたくなってきた。

長次郎の頭を巻くルートは3通りあると言うが、全く分からない。上に行ったり下に行ったり、崖に突き当たって戻ったり…。おまけに黒い岩と私の靴の相性が最悪で、ツルツル滑る。ああ、泣きたい。なんとか下にルートが見える岩棚の上に出たので、そこから懸垂下降でルートに下りる。

急なザレを下ると長次郎谷左俣のコルにでた。ここから尾根はやや広くなり、ちょっと滑ったくらいでは死ぬことはなさそうだ。ひと息つく。

110815雨の剱岳山頂雨の中、黒い岩の尾根を黙々と登る。目の前が開け、ぽこっとした山頂に出た。2999mの剱岳山頂だ。人で混みあう頂きと聞いていたが誰もいない。雨だし、視界はないし、もう3時過ぎてるし…。
 デジカメをザックから出し、とりあえず証明写真を撮って、すぐにしまう。
110815剱岳

前剱あたりまで下りてくると雨が止み、ガスが切れて剱岳が姿をあらわした。ここまで来る途中、カニの横バイや長いはしごなど難所があるが、しっかりした鎖が付いているので、雨の中を滑る靴で北方稜線を歩くことに比べたらなんでもない。

110815剱山荘手前の鎖場

日が暮れてきた。しかし、剱山荘が見えている。ゴールはもうすぐだ。行動時間は13時間を超えているが、しっかりした足取りで最後の鎖場を下る。

110815剱山荘

夕暮れの剱山荘に到着。建物はきれい、周囲はお花畑、いい小屋だ。ここから我々のテントが待つ剱沢は目と鼻の先だ。

6時にサイト場に帰還。山岳警察の駐在所に無事下山の報告をする。遅くまでうろうろしている間抜けな登山者状態だ。ロープワークとルートファインディングに時間をかけ過ぎたか。今後の課題。

それはそれとして、さっそく小屋でビールを買って、テントで乾杯!

次回に続く)

2件のフィードバック

  1. とかげの仲間
    お久し振りです。
    岩の殿堂と呼ばれる剱、良いですね。岩の色の感じも穂高と違っているような。
    2年前に6峰Cフェースから登ったとき隣りのAフェースの落石音にびびった事を思い出しました。
    また行ってみたくなりました。ありがとうございました。

  2. 惰性人 より:

    トカゲの仲間さん、お久しぶりです。
    Cフェースいいですね。
    Cフェースの頭で登りきったクライマー達は満足げな顔をしていました。
    八ッ峰縦走は浮石が多く、かなり気を使いました。
    今度は北方稜線完全縦走(できれば僧ヶ岳までつなげたい…)を目指したいと思っています。

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