2024 Mt.FUJI 100 – FUJI100mi参戦(1)
4/26 富士山こどもの国~天子ヶ岳~竜ヶ岳~五湖台~北麓公園
100マイルレースには人生が凝縮されていると言ったトレイルランナーがいた。100マイル(166km)走っている中で、うれしいことやつらいことが、まるで人生の山や谷のように押し寄せてくるということらしい。
トレランを始めてはや6年、一つの目標である100マイルレース、FUJI100mi完走に挑む。FUJI100miは、富士山の麓を回り込むように水平距離166.6km、獲得標高7039mを走る、日本を代表する100マイルレースだ。
途中で放棄することなく、遅くてもいいのでその人生とやらを最後まで全うしたいものだ。
4/26に開催されるFUJI100miに参加するにあたって、およそ1年半かけて準備をしてきた。その中で驚いたことが2つ。
- お金がかかる
- 準備が大変
1.は想定を超えていた。エントリー費45000円は言うに及ばず、荷物預かり、会場からのシャトルバスは別に支払う必要がある。さらに、レースに参加するためには、スタートが午前零時なので、それまでの仮眠のための宿泊費、会場までの交通費がかかる。ついでに言えば、参加資格を得るためには、中~長距離のトレランレースを3レースくらい完走する必要があるので(2024年まで。2025年から緩和された)、それぞれにお金がかかる。
全部ひっくるめると、東南アジアに旅行できてしまうくらいお金がかかる。
2.は想定通り、というか、やっぱりそうだよね、と言った感じ。参加資格を得るためのレースは1年で3レース、全部合わせて220km走ったので、体調管理とスケジュール調整がそこそこ大変だった。
そして、走る距離と時間が長いこともあり、参加要項の確認や、当日のスケジュール、装備、レースプラン、エイドの食料と自分で持つ食料、デポ(第4エイドにドロップバックが置ける)の内容など、準備、確認することが盛り沢山だった。
スタート直前に決めなければいけないこともあった。例えば、何を着て走るか、何を背負っていくかというのも、天気や気温に応じて数パターン考えておいて、直前の天気予報と当日の天気で決めた。
かなりバタバタして、レース当日を迎えた。
4/25(木)朝から快晴、日射しが強く暑い。午前9時に新宿駅でツアーバスに乗る。まずは富士北麓公園へ。
昼前に北麓公園に到着し、体育館で受付。預かり荷物用のビニール袋やビブスなど中身を確認してすぐに終了。
北麓公園のゴールゲート。今夜、富士山こどもの国をスタートし、100マイル走り、明後日の夕方くらいにこのゲートをくぐってゴールする予定。
仮眠場所へ行くバスは14時発。時間はたっぷりあるので、グラウンドの芝の上に腰を下ろして、コンビニで買っておいたサンドイッチをほおばる。
北麓公園からバスで富士山の西をぐるっとまわって富士宮駅へ。仮眠場所は駅前のホテル。チェックアウトを済ませて、近くのコンビニで夕食とデポ用の食料を買う。
ひと通り装備のチェックをし、パッキングを終えたのが16時ごろ。カーテンを閉めて、眠気を誘うために持ってきた小難しい本を、ベッドに横になってペラペラめくる。だんだん眠くなってきた...
寝たんだか寝ていないんだかよくわからない感覚だったが、20時半にはもう横になっていられず起きる。
寝たとしても3時間くらいか。これで午前零時から2日間走り続けられるのだろうか...
シャワーを浴びて、コンビニ弁当の夕食。ボトルに水も入れ、準備万端。
22時にホテル前にやってきたバスに乗って、スタートの富士山こどもの国に向かう。緊張と不安。あまり寝ていないし。
富士山こどもの国の駐車場はぎっしり。
たくさんの人がうろうろしている。地べたにシュラフで寝ている人もいる。私も直前まで寝ていたかった。
バスを下りて、まず余分な荷物を預ける。
日中の暑さはいずこへ、肌寒いのでウインドブレーカー兼用の雨具を羽織る。天気はたぶん曇り。
次はトイレ。
ものすごい行列。並んでいるうちに開会式が始まる。やばい。
20分ちょっと並んでやっとトイレに入ることができた。第1ウェーブはスタート直前。幸い?私は第3ウエーブ。慌ててスタートの列に並ぶ。
正面のお立ち台には、大会会長の鏑木さんの姿も見える。
BGMが熱気と緊張感をあおる。
4/26日、午前零時ちょうど、第1ウェーブスタート、そして第2ウェーブスタート。そして、いよいよ第3ウェーブ。
「第1第2は前座だ!いよいよ本番だ!」と司会進行の大会プロデューサーの六花さんが叫ぶ。
スタート!!!
さて、無事に走り切り、明日、あのゴールゲートをくぐることができるのだろうか...
最初はロード、まだ先は長いのに、みんな普通に走っている。
私も心拍数が上がらないように注意しながら流れに乗る。
トレールに入るところで渋滞。暑くなったので雨具を脱ぐ。ライトを消して見上げると、真っ暗な夜空に星が見える。天気は回復しているようだ。
ここから最初のエイドまで断続的に渋滞が続く。流れたと思っても、滑りやすい短い下りでまた止まる。
ぬかるむ窪地もいくつか横切る。靴がドロドロ。途中、なぜか獣の匂いが頻繁にする。馬でも通るのかな。
富士宮のファーストエイドまでは、全体的に下りだ。
ロードに出ると明かりが見えてきた。
第1エイド、富士宮、スタートから25.3km。
4時間弱、走ったり歩いたりを繰り返してきたが、それほど疲れず、あっという間だった。
バナナとアンパンをコーラで流し込んで、エイドを出る。
天子ヶ岳登山口の手前で、空がうっすらと明るくなってきた。
薄紫色の富士山が美しい。みんな、立ち止まって写真を撮っている。
天子ヶ岳山頂まで、およそ800m、ひたすら樹林帯を登る。長袖Tシャツが汗に濡れる。
天子ヶ岳へに登っている途中で、富士山の後ろから陽が昇る。
朝食代わりのあんこ餅を食べながら登る。あんこ餅は、水がなくても食べられ、食べた感があり(ジェルは食べた感がない)、腹持ちもよいので、私のお気に入り。
コース上にはエイドが8つあり、そこには食料や飲み物が用意されている。
しかし、エイドとエイドの間が25kmもあったりするので、食糧計画は重要だ。
登り切った稜線は、気持ちの良い風が吹き抜ける、広葉樹の森。
私の目の前に、ワラーチ(サンダル)で走るランナーがいる。
長者ヶ岳山頂。ずっと富士山と一緒。
長者ヶ岳山頂から白銀の南アルプス。
ここから熊森山までは、緩いアップダウンの縦走路を走る。
イワカガミ。まだ花の写真を撮る余裕がある。
熊森山山頂で、横になって寝ているランナーがいた。すごい気持ちよさそうだったが、まねしてはいけない。
熊森山から稜線を外れ東に下る。
斜面が急になると渋滞が発生する。するすると抜く。ただ、まだまだ先が長いので控えめに。
林道に出ると水場がある。顔を洗う。気持ちいい。頭がすっきりする。
道が平坦になると第2エイドは近い。富士山に向かってひと走り。
第2エイド、麓、スタートから52.5km。
ここには、楽しみにしていた富士焼きそばがある。ん、ちょっと量が少ないな。肉が入っていないのか...でも、甘いものばかり食べていたので、塩気がとてもうまい。
焼きそばだけでは足りないので、例のごとくアンパンをコーラで流し込む。
ハイドレーションに水を補給するが、ただそれだけが面倒。スタートして初めて腰を下ろして休む。
9時間以上走り続けたんだな。天子越えで足が疲れた。ちょっとした上りも下りもだるい。まだ始まったばかりなのに。
気がつくともう20分も休んでいた。あっという間だ。
もう行かなきゃ...
麓エイドから、石がごろごろした河原のようなトレイル。疲れた足に響く。一歩一歩が痛くて走るのが辛い。まだ1/3も走っていないのに。
牧場にそったトレールは、柔らかい土で走りやすかった。富士山の眺めも、落ち込んだ気分を癒してくれる。
獣臭はがまん。
目の前の端足峠を目指す。重い足で、あんなところまで登れるのか...
と思ったが、無心でいたらさっくり登れてしまった。
端足峠から竜ヶ岳までは、以前歩いた笹の切り開きの道(「本栖湖ぐるっと一周」)。知っている道は気が楽だ。
竜ヶ岳山頂には、草の上でゴロゴロしているランナー多数。
私もやってみよう。草に寝転び大の字になる。ああ気持ちがいい...寝ちゃいそうだ、寝たら最高に幸せだろうな...う~ん...
いかん!!寝落ちしそうだった。走り続けなければ。秘密兵器のカフェインドロップを投入。苦みに脳が興奮して目が覚める。
竜ヶ岳からは快適な下り。だらだら登っていたら下りの足が復活していた。
本栖湖湖畔を少し走って、公衆トイレに入って、樹海のトレールに突入。
平らなトレールを走るのもしんどくなってきた。でも、土のトレールは足にやさしく、アスファルトより走りやすい。
14時間で第3エイド、精進湖に到着。スタートから70.7km。
スープパスタがあったが、残念ながら麺がスープを吸いきってノビノビ。でも塩気がうれしいので完食。
パイプ椅子にぐったりと腰かけてちょっと休む。まるで椅子に引っ掛かったぼろきれのよう。疲れた。眠い。
でもまだ半分も走っていない。
樹海のトレールを少し行って、ロードに出る。
もう、ちょっとした上り坂でも足が重くて走れない。歩く。下りはトコトコ走れるが、大腿四頭筋が痛い、走りたくない。
どうもみんな同じみたいだ。
ロードが長いよ~。
ロードを歩いていると、睡魔に襲われ、歩きながら寝落ちしそうになる。カフェインのとりすぎはまずいので我慢する。
ぼーっとしながらフラフラ歩いていると、風穴に至る途中で自動販売機発見。強炭酸レモン水を買う。これは、仕事中に頭をすっきりさせるためにいつも飲んでいるやつだ!
一気に半分くらい飲む。は~、眠気がだいぶ冷めた。気分も一新、走り続けよう。
風穴から紅葉台へ上る。ほとんど林道。黙々と登るのみ。
五湖台からの展望は広々としてすばらしい。
ここからまた下り。
河口湖に向かって駆け下る。
先を行く女性二人が、おしゃべりをしながら走っている。元気だな。
五湖台を下りると夕暮れの気配。
あたりが薄暗くなってきた。眠気がまたやってきた。そろそろいいだろう、カフェインドロップを投入。
そして地獄のロード、北麓公園のエイドまでは長いロードが続く。足が痛くて走れない。
途中で真っ暗になる。前を行くランナーのライトの光を見つめながら、永遠に続く真っすぐな長い上り坂をペタペタと引っ張られるようについていく。
こんな状況でもとても助かるのは、ここまでルート案内が完璧。街中の複雑なロード区間でも、要所要所に人が立っていて案内してくれるので、コースをロストすることはない。
長い上り坂を登り切って左折、北麓公園が近い。
およそ19時間半で第4エイド、富士北麓公園。スタートから97.4km。
やった、半分以上終わった、あとはハセツネ1回分だけだ!あはははは...疲れすぎてだいぶ頭がおかしくなっている。
まずは、アンパンとコーラ。
そして、ドロップバックを回収。靴下とTシャツを着替える。
疲れた、食欲もない。が、回収したカップラーメン作っているうちに何かが戻ってきて、食欲がわいてきた。カップラーメンすすりながら、ホットドックを食べる。
あんこ餅と自作ジェルをバックパックに詰める。アンパンコーラのおかげでエナジバーはあまり食べないで済んでいるので、減らすことにする。スポドリを作ってハイドレーションを満タンに。
仮眠のためのシーツもバックパックに押し込む。
最後にもう一度荷物を確認。疲労で注意力が落ちているので慎重に。奥信濃100では痛い目にあった(「初の100kmレース、2023奥信濃100参戦」)。
疲れすぎていろいろな感覚が変になっていて、20分休憩のつもりが40分も椅子に座っていた。
40分もエイドにいたのに撮った写真は時計の1枚のみ。おまけに、係員だと思って関係ない人に話しかける。
なんとか回復して出発。周囲の人が頑張れ~と次々と声をかけてくれる。
次のエイドまで頑張って、そこで仮眠しよう。
(次回に続く)
赤星山もおといこさんも地元で親しまれている山のようですね。調べてみたら行ってみた…