うんざりトラバースが阻む緑の秘境~雲取山から三条の湯(2)
6/1 鴨沢~ブナ坂~雲取山~三条ダルミ~三条の湯~サオラ峠~のめこい湯
(前回の続き)
三条ダルミで縦走路と別れる。ここからはいよいよ未踏のトレール。
三条ダルミから最初は石がごろごろ、そしてうっそうとした森の緩やかなトラバース道となる。
雲取山への道でも見事だったが、ここのツツジも負けていない。薄暗い樹林の道を鮮やかに彩る。
道はよく踏まれているが、小さな崩落個所がいくつかあり、道が不明瞭になる場所がある。踏み跡をたどりながら慎重に進む。
天然林の巨木。
やはり三条ダルミから先は、鴨沢ルートのようなポピュラーな道とは少し趣が違う。森は原生林の趣があり、美しいながらも入ったら出てこれなそうな不気味さも感じる。
そして静かで、人が少ない。三条ダルミを出て、すれ違ったのはここまでで2人だけだ。
前日までの雨のせいか、苔がみずみずしく輝いている。豊かな苔は奥秩父に足を踏み入れたことを教えてくれる。
岩っぽいところもある。左は崖なので慎重に。
道が手持ちの2万5千分の1地形図と違う。
手持ちの地形図では、登山道は水無尾根の枝尾根を越えて水無尾根に乗る。しかし、その道は、落ち葉が積もった踏み跡になっていて、よく踏まれたトレースはV字に折れ曲がり枝尾根を登り返している。
ここは素直にトレースに従って、枝尾根を登り返す。
(あとで山と高原地図を見て、私の地形図が古い道であることを確認した。)
だいぶ登り返して水無尾根に乗る。
尾根が細くなり、一瞬、樹林から抜ける。そこからは、低い雲が垂れこめる飛龍山が見えた。
いい加減トラバースに飽きてきたころ、道標があらわれる。ここから水無尾根を離れ三条の湯へ下りる。
これがまた急な下り。ズサッ、ズサッと湿った土を踏みしめながら、ちょっとうんざり。
トレランシューズにも細かいゴミが入る。
やがて沢沿いの立派な登山道に出る。
勢いよく流れる三条沢にかけられた橋を渡る。
橋を渡って見上げると、斜面に張り付くように建つ三条の湯の小屋が見える。沢から少し登って小屋に12時4分到着。
三条の湯は、後山林道の最奥、標高約1,100mに位置する山小屋だ。源泉かけ流しの温泉があることで知られ、日帰り入浴もできる。奥多摩の深部のまさに秘湯。
山を覆う暑苦しいほどの緑、そして、うるさいほどの蝉の声、そしておそらく蛙の声、すべてのものに圧倒される。まさに緑の秘境。
さて...時計と計画を見比べると温泉に入る時間が20分くらいある...。ちょっと20分じゃ無理かな。残念だけど先を急ごう。
小屋に入っていく登山客2人を横目に、いつものあんこ餅を食べて出発。
三条の湯からサオラ峠へ登る。また樹林の中のトラバースだよ。道は尾根の左側をひたすらトラバースする。
ところどころザレに覆われていたり、落ち葉に覆われていたりして分かりにくいところがあるが、まあ大体しっかり。
日中になり気温が上がってきた。走るとすぐに汗が出る。森の風は爽やかだが、体を冷やすには全然足りない。
大きな沢を3つほど渡る。
ちょっと下っては沢を渡り、下った分の倍は登り返す。これをひたすら繰り返す。
ひたすらトラバース。
左側を踏み外すとえらいことになりそうな、沢床まで絶壁のところもあった。ちょっと注意しながら行く。人工林になると、道が立派になるのでそこは走れる。うんざりするほど走れる。
長いトラバースにもういい加減にしてくれ~、と思いはじめた頃、前方が明るく開けてきた。傾斜が緩み、正面に小さな祠が見える。
サオラ峠だ。
サオラ峠。三条の湯と丹波山村(お祭り)を結ぶ古い峠道で、地元の人々が行き来した生活の道でもある。
峠でおにぎりを食べ、少し休憩。蝉の鳴き声がいつの間にか聞こえなくなっていた。ここからは以前走ったトレール(「奥秩父へ足をのばす」)
サオラ峠から天平尾根へ。「天平」とは丹波方言で「でいろ」と読み、平らなところを意味するそうだが、その名の通り広く平らな尾根。雨水が溜まるのか、まっ平らな湿地っぽい場所もある。
広くなだらかな林の中の一筋のトレールを走る。足元はフカフカで足にやさしい。気持ちよく走れる。
アンテナが見えたら丹波天平。ここを右に曲がって尾根を下りる。真っすぐ走り続けたい気分だが、のめこい湯に行くには下らなければならぬ。
コースタイムは丹波小のバス停まで1時間10分。まあ、30分で下れたらいいな。
丹波天平からの下りは、急斜面に刻まれたジグザグのトレール。私の山と高原地図では破線ルートだが、迷うような場所はほとんどない。
ただ、1日の最後の下りは足にくる。膝の両側の筋肉が悲鳴を上げてきた。しばらく山で走っていなかったせいだろう、体に正直に出た。でも無視して走り続ける。
登山道は丹波小学校の裏で終わる。丹波小学校を通り抜けて、バス通りへ。
ほぼ30分ぴったりで丹波小バス停まで下りてきた。
バスの出発まで50分。よし、温泉に行ける!
道の駅たばやまの「のめこい湯」へ急ぐ。
丹波小学校から5分もかからず、道の駅たばやま。のめこい湯はこの道の駅にある。
のめこい湯は多摩川源流・丹波山村が運営する日帰り温泉施設で、「のめこい」とは地元の方言で「つるつるすべすべ」を意味するらしい。泉質はアルカリ性単純泉で、肌がつるっとする柔らかいお湯だ。
温泉の受付に2時59分30秒到着。3時からは割引になる。30秒待ってチケットを購入。
湯船に浸かれたのは10分だけだったが、それでも十分すぎるほど気持ちよかった。足の疲れが、スーッと抜けていく。
急いで上がって、売店で缶ビールと澤乃井の「大菩薩」を購入。初めて見た銘柄だ。軽食コーナーで鹿肉のキューブみたいなのが入った、シカゴロコロッケにかぶりつきながら、ビールをごくりとやる。ぷは~。
やることはすべてやった。道の駅の向かいのバス停でバスを待つ。日差しが暑い。さすがは6月、初夏の陽気だ。山の上では冷たかった風が、今は夏のそれに変わっている。
鴨沢でどっさりと登山者が乗り込んできて、バスは満員。
終点の奥多摩駅。バスターミナル横のかつ丼がおいしかった蕎麦屋がなくなっている。建物ごと取り壊されて更地になっている。再開発だろうか。どうなるのだろうか?
暑くてトラバースにうんざりした一日。
それにしても三条の湯周辺の秘境感はすごかった。次はぜひ三条の湯に入ろう。
(三条の湯、完)
参考:
地図
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赤星山もおといこさんも地元で親しまれている山のようですね。調べてみたら行ってみた…