12万円で世界を歩く、そしてリターンズ


学生時代に古本屋でなにげなく手に取った文庫本、「12万円で世界を歩く」、
そして、「進め電波少年」が私にとって、旅のバイブルだった。

「12万円で世界を歩く」の著者、旅人の下川氏は、LCCはおろか、まだ格安航空券さえ存在しない時代、足代を切り詰め、宿泊費を切り詰め、食費を切り詰め、たった12万円で赤道を目指し、ヒマラヤを目指し、そしてユーラシア大陸を鉄道で横断する。
「12万円で世界を歩く」には、金欠の私にも夢を抱かせてくれる世界が広がっていた。

ただし、当時、私は山の装備を買うのもぎりぎりだった。冬用のシュラフが買えずに、スリーシーズンシュラフに新聞紙を詰めて厳冬期の八ヶ岳で凍えているような状態。とても海外に行く余裕はなかった。
「12万円で世界を歩く」を何度も読み返し、いずれは世界中を旅したいと夢見ていた。

この本の最初の旅は、1988年6月にインドネシアの赤道を目指す旅。当時、下川氏は34歳。シーツも替えられない安宿に泊り、夜行バスで悪路を揺られ、道端の温泉に素っ裸で飛び込む、薄汚れた怪しいオジサン、という風体だった。

2019年、「12万円で世界を歩く」が帰ってきた。
下川氏は64歳。30年の月日が、彼を怪しいオジサンから、貧相なおじいさんに変えていた。
そんな彼が、「12万円で世界を歩く」で旅した道を、30年たった今、再び旅をする。それが「12万円で世界を歩く リターンズ」だ。
「12万円で世界を歩く」でたどった12ルートのうち、交通機関の途絶や政情の変化によりたどれなくなったルートを除く、9ルートをたどる。

30年前には何もなかった田舎町に鉄道が走り、バスとほぼ同じ値段でLCCが運航し、状況はすっかり変わってしまっている。
「リターンズ」とタイトルがついているが、そこには、新しい「12万円で世界を歩く」の旅が繰り広げられている。

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