オルーロからラパスへ苦難の道~南米4ヶ国の旅(22)

9/6 ウユニ~オルーロ~ラパス

前回の続き)

130906ボリビア、オルーロ、夜行列車6時半、外から差し込む光で目が覚める。外の景色は相変わらず乾いた平原、天気は快晴。列車はガタガタと揺れ、トイレに行くのも一苦労。


130906ボリビア、オルーロ、夜汽車の朝食乗務員が紙袋に入った朝食を配る。我々の乗った”Ejectivo”はいわゆる一等車で朝食がついている。でもやっぱりお菓子系。


130906ボリビア、早朝のウルウル湖

今までの乾いた景色とはうって変わって、列車は湖を横切って進む。ウルウル湖だ。どういう風に線路を引いたのかは知らないが、右を見ても湖、左を見ても湖。

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鴨の群れが列車に驚いて飛び立つ、そして遠くではフラミンゴがゆったりと餌を食べている。

130906ボリビア、オルロ駅

土色の家々、マリア様の立つ丘が見えてくる。そして9時すぎにオルーロ駅に到着。

いつもの小さなザックを背負い、手には使いきれなかった水4リットルのペットボトルを持つ。重いよ~。と、手にからのペットボトルを持ったおじさんが、興味深げにこちらを見ている。しめた!おじさんを手招きして、おじさんのからのペットボトルになみなみと水を注ぐ。おじさんは”Gracias!”(ありがとう)と言って握手して去っていった。いやいや、ありがたいのはこちらだ。捨てることなく水を軽くすることができた。

130906ボリビア、オルーロの通り

午後にオルーロを発ってラパスに向かう予定なので、それまで時間がある。めぼしい観光地はないようだが、教会と鉱物博物館に行くことにした。地球の歩き方には「徒歩でも行けるが、かなり急な上り坂」とある。もしかして目の前のあれを登るのか?

130906ボリビア、オルーロのサルテーニャ

坂道を登る前に腹ごしらえだ。お菓子系朝食では力がでない。人だかりのファーストフード店のような店に入る。メニューがない。まわりを見るとみんなアルゼンチンの”Enpanada”(エンパナーダ、「イグアス滝めぐり」で食べた)のようなものを食べている。2個頼んでかぶりつく。
  ○×△~!!!あちーーー!
 エンパナーダは肉まんのような具が入っているパイだったけど、これは中にたっぷりスープが入っていて、無造作にかむと、プシュー、と熱々の液体が吹き出してくる。よく見れば、まわりの人たちは、スプーンで具をすくって食べている…。やけどした。でもうまい。皮はホットケーキのようにちょっと甘い。そして中にはジャガイモやひき肉、チーズといった具がカレーに似たスパイス味のスープとともにたっぷり入っている。

あとで聞いたところによると、これは”Saltena”というボリビアの名物で、その名は私が先週滞在した街”Salta”(「サルタ到着、大ピンチ!」)に由来しているそうだ。ボリビアの戦争のときに、ボリビアを応援するサルタの女性達が作って届けてくれたそうだ。じゃあ、やっぱりこれはもともとエンパナーダだ。

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広場でマーチングバンドをやっていたり、巨大滑り台で子供達がふっとんでいたり、活気のある街。

130906ボリビア、オルーロのソカボン教会

恐れるほどの登りもなく、ソカボン教会に到着。

130906ボリビア、オルーロのソカボン教会のミサ

教会の中に入るとひんやりして涼しい。青い夜空に金色の星の天井が美しい。ちょうどミサをやっていた。ギターの伴奏で賛美歌を歌っていた。

130906ボリビア、オルーロのソカボン鉱物博物館の入り口さて、教会を出て、ソカボン教会にあるというソカボン鉱物博物館を探すが見つからない。教会の隣の建物に入って聞く。なんと、鉱物博物館の入り口は、教会の祭壇の横の洞窟だった。


130906ボリビア、オルーロのソカボン鉱物博物館

オルーロは大鉱山に囲まれた、大工業都市。廃坑となった坑道が博物館として利用されている。入り口から長い階段を下ると、空気は徐々に冷たくなり、硫黄の香りが漂い鼻がムズムズしてくる。壁や天井には青や黄色の色とりどりの鉱石が露出している。そして坑道の奥には、鉱山の神様として地下に閉じ込められた悪魔が祭ってあった。

鉱物博物館の次は、教会の隣の建物にある考古学博物館に行く。化石からカーニバルの衣装から、オルーロの鉱山を支配していたパティーニョ一族の調度品まで、オルーロに関するありとあらゆるものが展示されている。

サルティーリャの店も、博物館もそうなのだが、店員、係員がフレンドリーでとても親切だ。こちらがまごまごしていると、うまくいくようにちゃんと取り計らってくれる。治安の悪い南米の最貧国、というボリビアのイメージがちょっとよくなった。

130906ボリビア、オルーロ、キリストの丘へ

さて、まだ時間があるので、キリスト像が立っている隣の丘に登ろう。相棒は、ゆっくり歩けという私の言葉に耳を貸さず、元気に登りはじめる。が、すぐに歩けなくなって階段の手すりに座り込み、ゼーゼーハーハー言って、地元のおばさんに笑われている。言わんこっちゃない。ここは標高3700mを超えているんだよ。

130906ボリビア、オルーロのキリスト像

なんとか(15分ぽっちだけど)丘を登りきる。キリストが両手を広げて迎えてくれた。

130906ボリビア、オルーロのパノラマ
(写真クリックで拡大)

展望台からオルーロの街を見渡すことができる。赤茶けた人口22万の工業都市。飛行場や煙を吐く工場群が見える。今朝通過したウルウル湖も見える。そしてその向こうは乾いた砂漠、アンデスの山々。

130906ボリビア、オルーロの地上絵

隣の丘の山肌に絵のようなものが見える。インカ帝国の幹線道が通っていたこのあたりには、あちらこちらに地上絵が残っているとのことだ。

130906ボリビア、オルーロの街、学生が多い

さて、そろそろオルーロを発たなければ。丘から真っ直ぐにバスターミナルに向かう。学生も多く、街はにぎやかだ。こっちの学校も制服があるんだね。

130906ボリビア、名物料理

バスターミナル周辺にはいくつかレストランがある。こじゃれたレストランに入る。なんだかよく分からないけど、ボリビア名物を頼む。でてきたのはこれ。名前は知らない。茹でた巨大とうもろこしとジャガイモの上に甘辛く味付けしたリャマの干し肉がのっている。ジャガイモに佃煮をのせたもの、と思ってもらえばほぼ間違いなし。

130906ボリビア、オルーロのバスターミナル

オルーロのバスターミナル。街の賑わいにくらべて、なんだか人気がなく寂しい。

ここからこの旅一番の綱渡りの苦難の道が始まる。

ターミナルにずらりと並んだ窓口にはほとんど人がいない。切符が買えない。たまたまいる人に聞いても、あっちの窓口へ行けとか、早口になにかまくし立てるだけ。ターミナルの周りをぐるりとまわって、ラパス行きのバスを探すが、バス自体、ほとんどとまっていない。どうしたことだ?
ターミナル内のバス会社のオフィスにいたおばさんを捕まえて聞いてみる。知らない単語が多くてよくわからないが、ターミナルからはバスがでず、ターミナルの外に行けばいい、と言っている(ように聞こえる)。おばさんの言うところには乗り合いタクシーの呼び込みがいた。

これは何か変だ…。バスはない…人もいない…。時間的にももう厳しい。オルーロからラパスまではバスで3時間半。ラパスは治安が悪いとのことなので、日没前、遅くても5時には着きたい。そうであれば、今にも出発しなければ。乗り合いタクシーは高いが、今すぐ乗ってここを出よう。
 が、相棒はタクシーが高すぎる、と。私はかなりあせっていたが、とりあえずもういちどターミナルを一周する。状況はなにも変わらないので相棒もさすがに納得して、タウンエースのようなタクシーに男7人が詰め込まれ、ターミナルを出発する。

ひと安心…いや、何か変だ。タクシーは舗装道路をそれ、土の壁にトタン屋根の家がならぶ、泥道に入ってゆく。スラムだ。そして、さらにゴミが不法投棄されている郊外の空き地へ…。もしかしてタクシー強盗だろうか?相棒に気を抜かないようにと目で合図する。他の乗客は携帯をみたり、楽しげにおしゃべりしているが…。タクシーはボロ屋やゴミの間を右へ左へと細かく曲がりながら進んでゆく。
 そして、遠くに幹線道路が見えたときすべてを理解した。道路にはバスも含め、隙間がないほど車がつまり大渋滞。そしてその渋滞の先には、道をふさぐように何台もの車がとまっている。ボリビア名物の道路封鎖のストライキだ。おそらくオルーロに通じる道路はすべて封鎖されているのだろう。それでこのタクシーは道なき道を進み、町を出ようとしているのだ。乗り合いタクシーにのってよかった。

状況がすっかり理解できてひと安心…。とはいかなかった。オルーロとラパスを結ぶ幹線道路はほぼ全域に渡って拡張工事中。舗装道路と砂利道が交互にでてくる。大型トラックも多い。ジリジリしながらノロノロとラパスに向かう。

130906ボリビア、エル・アルト

アンデスの山々がオレンジ色に染まる頃、今までの町とは比べ物にならない大きな町が広がる。ラパスに違いない。なんとか日没前についたか…。やっとひと安心、とここでは思った。

タクシーは街に入る。通りの両側にはバラックが建ち並び、みすぼらしい身なりをした人々が大勢行き交っている。道は渋滞し、常にクラクションが響き渡り騒然とした雰囲気。何か変だ。ラパスは谷底にある植民地時代の名残のある街のはず。

タクシーがとまる。みんな下りる。ここはどこだ?ラパスではないようだが…?ああ、ここは誰、私はどこ?ドライバーに聞くと、ラパスには行かないという。はあっ?フロントガラスに張ってある”La Paz”はラパス行きと言う意味だろう!どうしよう…。もう日が暮れてしまった…。ここは”El Alto”(エル・アルト)と言うところらしい。

一緒にタクシーを下りた小柄な労働者風のおじさんがたどたどしい英語で、自分はラパスに行くから一緒に行こうと誘ってくれた。はっきり言って「怪しい」。とっても「怪しい」。う~ん、こちらは男2人、もし人通りのない道や、他の人の乗っていない車に誘われたら、どついて逃げよう、と覚悟を決めてついてゆく。おじさんと一緒に乗り合いタクシーに乗り込む。たどたどしい英語で、イギリスに8年住んでいたから英語が話せるんだとか言っている。う~ん、よけい怪しいぞ。
 しかし、20分ほど走り坂を下り始めると、眼下の谷間に銀の砂をまいたかのような夜景が見えてきた。きらめく宝石箱のようだ。”La Paz?”と聞くと”Si!”。ああ、本当にラパスに連れてきてくれた。もしかしたらとっても高い案内料を吹っかけられるかもしれない。それでもしかたないか…。でもタクシーを下りると、ドライバーから請求された金額の半分を私に要求しただけだった。そして、今夜のホテルの名前を聞くと、ラジオタクシー(これ重要)をとめて、ドライバーに行き先を告げて私たちを乗せてくれた。おじさん、ありがとう、本当にありがとう。疑ってごめんね。
 
 7時過ぎ、ホテルに到着。長い一日だった。気が付けば4リットルのペットボトルを手に持っていなかった。どたどたしていて、どこかにおいてきてしまった。

130906ラパスの夜

シャワーを浴び、一休みして街に出る。ちょっと休んだつもりが、もう9時だった。にぎやかなラパスの街はエル・アルトととはぜんぜん違う。

130906ラパス、夕食

街はにぎやかだが、9時を過ぎるとレストランがほとんど閉まっている。なんとかサンフランシスコ寺院近くのビルにレストランを発見し入る。今日は鶏肉、そしてサラダ。ワインも飲むぞ。あ~、緊張がとけた後に飲む白ワインはしみる~。

130906ラパス、レストラン2

このレストランではフォークロアのダンスのショーを見ることができた。おそらく高校生くらいと思われるカップルがかわいらしく踊っていた。

すっかりいい気分になってレストランをでる。11時近い街は人通りがほとんどなくなっていた。どの建物の扉も分厚い扉で閉ざされている。窓には鉄格子。やばい雰囲気。早くホテルに戻ろう。

次回に続く)

参考

ソカボン鉱物博物館
チケット売り場はソカボン教会の隣の建物(中でつながっている)、入り口は教会内後部の祭壇の横。2013年秋現在、考古学博物館のチケットと撮影チケットとあわせてBs23。
オルーロ~ラパスのバス
オルーロからラパスへは多数のバス会社により20、30分間隔で長距離バスがでている、はず。しかし、記事のとおり今回は乗り合いタクシーを使った。エル・アルトまでBs70だった。

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