火の渓谷エルドギャ、そして荒野のオアシス、ランドマンナロイガルへ~アイスランド&グリーンランド(12)
8/8 スカフタフェットル~エルドギャ~ランドマンナロイガル
(前回の続き)

最初の1時間はレイキャビックから来た道を戻る。そして交差点で休憩の後、バスは右折し1号線と別れ内陸へと向かう。道はF208という幹線道路だが、4WD以外進入禁止のダートになる。周囲は見渡す限り不毛の荒野、ハイランドから流れ出る川が広く蛇行しながら飛沫を上げて流れ下る。そして川には橋がなく、バスはザバザバと水をかき分けながらいくつもの川を渡る。4WDしかだめなわけだ…。
周囲の景色は一面の乾いた大地、あるいは蛇行した暴れ川、あるいはカレー色の苔の斜面。そして、この激しい落石地帯。それでもバスは苦しそうなうなりをあげながら前進するのみ。
激しい…。先日のハイランドのダートはまだ穏やかだった。バスはカーブするたびに「おいおい、倒れないか?」というほど傾き、天井に頭をぶつけそうになるほど上下する。ランタン谷へ行ったときのネパールの道路より激しい。
広い河原のようなところで休憩。エルドギャなるところらしい。看板とトイレがある。トレッキングルートもあるようだ。バスの運転手さんは「近くに滝があるから見てきなさい」と言う。休憩時間は1時間、お言葉にあまえて出発。
崖にはさまれた広い河原を行く。しかし、もともとここは河原ではなかった。「エルドギャ」とは「火の渓谷」という意味。ここはマグマが噴き出す地面の割れ目だったのだ。しかし、20分歩いても問題の滝はなかなか現われない。ちょっとあせってくる。
渓谷の屈曲部を越えると、突然目の前に巨大な滝が姿を表す。これが「オゥファイル滝」だ。轟音を轟かせながら溶岩の崖を二段になって流れ落ちる男前の滝。ここまで25分かかった。あわただしくバスへ戻る。

このあたりの苔は不思議な色をしている。緑よりも黄色やオレンジ、カレー色が目立つ。
バスに戻れば出発10分前。かなりギリギリだった、が、誰も帰ってきていない。ずっと後をフランス高校生の一群が歩いている。バスの運転手さんも気にする素振りなし。どうも時間に細かいのは日本人の悪い病気のようだ。この悪い病気を治さない限り日本に「ゆとり」はない気がする…。結局15分遅れでバスは出発。
内陸に進むにつれてどんどん砂漠のようになってゆく。でも川が流れているので、雨が少なくて砂漠になっているのか、放牧された羊が草を食い尽くしたのかは不明。
右に左に揺さぶられ、ザバザバと川を渡り、パリダカのように土埃を巻き上げる四駆とすれ違い、バスがうめき声を上げながら岩屑の丘に登り、そこでとまる。運転手さん一押しの撮影ポイントということで、みんなバスから下りて写真を撮る。そう言えば丘陵地帯から山岳地帯へと移りつつあるようだ。目的地は近い。
バスは岩屑の丘を下る。遠くに真っ白な平原が見える。雪?いや今の時期ありえない。だんだん近づいてきてなんだか分かった。ワタスゲだ。地平線の彼方まで何キロも湿原が続き、一面ワタスゲに覆われている。本日、一生分のワタスゲを見た。
そしてワタスゲの湿原の果て、殺伐とした山々に挟まれた平地の一角に、ずらりと並ぶバスといくつかの平屋の建物が見えてきた。生き物の気配さえないところに突然人間の空間が現われるさまは、荒野のオアシス。今日の目的地、ランドマンナロイガルだ。
(次回に続く)
赤星山もおといこさんも地元で親しまれている山のようですね。調べてみたら行ってみた…