人はなぜ山に登るのか?ヒマラヤ・サミッターの2冊~本の紹介

人はなぜ山に登るのか?

エベレスト50年の挑戦―テンジン親子のチョモランマ
(廣済堂出版、Jamling Tenzing Norgay、Broughton Coburn)

息子は偉大な亡き父親の背中になにを見たのか?極限の状況での信仰とは?そして、チベットの民にとってヒマラヤとは?

世界最高峰・エベレストの初登頂者、テンジン・ノルゲイを父に持つジャムリン・テンジン・ノルゲイが大惨事の1996年エベレストに挑んだ記録。彼は父親から山を教わることなく、しかし、英雄である父を常に意識せざる得なかった。その彼が悲劇の年のエベレストへの挑戦を通して、父を語りそして自分自身にその意味を問う。

エベレストへの挑戦の歴史を知るため、そして山と向き合うために読むべき本。

K2 非情の頂―5人の女性サミッターの生と死
(山と渓谷社、Jennifer Jordan)

“K2”、パキスタン、カラコルムに位置するその世界第2の高峰は、困難な登攀と多くの犠牲者から「非情の山」と呼ばれる。この本が記された2004年時点で、その頂に立った女性はたった5人、~すでに全員に山に消えている~、その女性の挑戦と死を女性ジャーナリストが追った。

筆者は数々の記事や知人達へのインタビューにより、今は亡き、個性的で強烈な情熱を持った5人の女性達を生き生きと描き出している。しかし、それは、ジャムリンのエベレスト挑戦とは異質なものだ。

ある者は慣習を全く気にしない自由奔放な女性であり、またある者はやさしい母親だ。山に登るのは、名誉と見栄のためであり、または金のためであり、または空を飛ぶような何かのためであったりする。

そして女性であるがために、常に世の中の偏見や、男性の羨望や欲望にさらされ(正直なところ、ヨーロッパの男は山でもやることばっかり考えているのか?と思った。)、また逆に女性の武器を使って困難なルートを登り切った者もいる。

「暗黒に彩られたK2の女性登攀史」と著者は言う。

これも現実なのだ。いや、もしかしたらジャムリンのエベレストはきれい事で、こちらが本当の現実なのかもしれない。

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