被災地を撮ることの意味~ボランティアと写真撮影(2)

前回の続き)

理屈っぽい話にもう少々お付き合いを…

そして2つ目の問い。被災地の姿を伝えるためなら撮影は認められるか?

被災地の現状を家族や友人に伝えるために撮影したい、と考えるボランティアは私も含めて多くいた。また、被災した方の中にも、伝えるために撮影してもいいと思った方もいたかもしれない。

では、多くの被災した方が望まなくても、一部の方が望み、あるいは被災地を姿を伝えることが後々、復興にプラスとなると思われるなら、先に書いたボランティアの一番の目的を逸脱して、撮影することを認めるべきだろうか?

これはあくまでの私個人の考えだが、「NO」だと思う。写真の「真を写す」、伝えることの本質の問題だ。

被災地に初めて入ったほとんどすべてのボランティアが言うことは、「思っていたのと全然違う」とか「テレビや新聞で見たのと違う」だ。つまり、マスメディアの映像や画像は被災地の姿をありのままには伝えていない。

その理由の一つは、写真そのものの性質。あくまでも写真は平面の絵にすぎない。被災地のヘドロの匂い、行方不明者を探すヘリの音、ボランティアから警察官、道路作業員まですべての人に共通する張り詰めた雰囲気、荒涼とした景色の広がり、そのような被災地に立つ人を包み込むすべての要素を写真では伝えることはできない。撮る人の技術にも多少依存するだろうが。

また一つは、写真は真、客観的な事実を写すものではなく、撮影者の心を写すものだということ。

良く言われるように、新聞の写真には被災地の至る所にあるむごい姿は見られない。逆にカメラマンはむごい姿を撮らずに悲惨さを強調するために、涙を流す人の写真ばかり撮るかもしれない。しかし、それは被災地のほんの一部分にしか過ぎない。あくまでも撮影者が写したいものを選んで写しているだけだ。でも何も知らない人はそれが真実の姿だと思うかもしれない。

要するに、写真では被災地を伝えきることはできない。それどころか、事実を伝えられないために、いらぬ誤解、間違った印象を与える可能性が大きい。プロの撮った写真は被災地を伝えていない、と被災地で感じた我々素人が、果たして写真で被災地を伝えることができるだろうか?体験に裏打ちされた言葉で補えば不可能ではないとも思えるが、相当に難しいことは確かだろう。

私のような通りがかりボランティアが、ボランティアの目的を逸脱して、ボランティア自体を危機にさらしてまで、難しい挑戦をすることはないのだ。

と言う事で、私は被災地の撮影禁止に納得した。もちろん、これはあくまでも私の考えであって異論もあるだろうが、このように思っておけば間違いないと思う。

ところが今回、撮影禁止がやや緩和された(「釜石市へ」)。

今回も、原則として被災地は撮影禁止であることは変わりない。しかし、隊長や班長から撮影の許可がでる場面が多くなった。場所や時間、構図に制限があるものの、被災地の撮影をすることができるようになった。

だが、先に述べたボランティアの目的、被災した方々との関係が変わったわけではない。被災した方々の気持に若干変化があったためだと理解している。

それは、震災から半年経って、被災地のことが被災していない人々から忘れ去られているのではないか、自分たちは見捨てられるのではないか、という被災した方々の切実な不安のためだと思う。被災地には今なお見上げるようなガレキの山がそびえ、沈下した土地は復興のめどが全く立たない。また、財産を失いしかたなく半壊した家に住む方がいたり、仮設住宅に入ったもののすべての絆が絶たれ、一人ぼっちで亡くなる方もいる。それなのに、東京の姿は震災前と変わらず、人々は普段どおりの生活をしている。

そこで、少しでも被災地の現状を伝えるために、被災した方々とボランティアスタッフで、条件をつけて撮影を許可する取り決めをしたらしい。

そのような状況で、私も今回は被災地を撮影しブログに掲載した。

これはとても重い撮影だ。今まで卒業式やら結婚式やら頼まれて撮影を引き受けたことがあるけれど、それは、撮られる側が心から撮って欲しい、残して欲しいと思っていた。しかし、被災地での撮影では被災した方々は、本当は撮って欲しくない、でも少しでも伝えるためには仕方ない、と思っておられるのだろう。

つまり、ボランティアが被災地でシャッターを切った瞬間に、ボランティアとして被災地の様子を伝える使命を負うのだ。報道のプロでさえ伝えきれない1000年にいちどの災害の現実を。

今回のレポート、「釜石市へ」、「陸前高田再訪」、「仲間が来てくれた!」には被災地の写真を掲載している。果たして私は被災地を伝えることができただろうか。はなはだ不安だ。あまりに不安で自信がないので、しつこいくらいに冒頭に口上を書いて注意を促した。

被災地の様子が少しでも伝わり、被災した方々の力添えに少しでもなっていればいいのだが…

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