ド、ドルフィンスイム…~小笠原諸島の旅(14)
5/5 父島・南島~ハートロック~兄島海中公園
(前回の続き)
南島を後に南崎へまわる。このあたりには垂直な壁を持った岩礁が林立している。う~ん、これを登るのは気持いいだろうな~、あの上に立ってみたいな~。ビレイはどうしたらいいんだろう…
船長の竹さんはボートの屋根で、岩礁を避けつつ、水平線に目を走らせつつボートを操る。そのとき…
「2時の方向、クジラ!」
右前方に目をやると100mほど先にクジラが潮を吹いていた。みんながどっと船の右側に集まる。おいおい、前に出るな、頭がじゃまで写真撮れないよ!…ドタドタしている間に、ザトウクジラは三角形の大きな尾を空中に大きく振り上げ、勢いをつけて海に潜っていった…
このあとは、イルカと一緒に海を泳ぐドルフィンスイムだ。だが、写真はない。なぜなら戦場だったから…写真のかわりにちょっと長いが実況を。
ハンドウイルカを見つけると、竹さんはイルカの進路前方に船をまわす。そして竹さんの「10時の方向!」の掛け声がかかる。するとみんな必死の形相でフィンをつけた足で、陸に上がったアザラシのごとく、バタバタとボートの左に駆け寄り、ドボン、ドボンと海に飛び込む。竹さんは「静かに入って!」と叫んでいるが聞いちゃいね~。運がよければ飛び込んだ所をイルカが通り過ぎ、それを10人くらいが全速力、必死のバタ足で追っかける。イルカと泳ぐと聞いていたけど、大勢でイルカを追い回す展開。
イルカを見失い海面から頭を上げると、みんなとんでもない遠くにいて、ボートもそちらに待機していたりする。すでに全速力のバタ足で完全に息が上がっているが、ここで海に沈むわけには行かない。残った力を振り絞ってボートまで泳いでいく。ヘロヘロになってボートに上がろうとして上がりきれず、力尽きて海に落ちる者が出てくる始末。ボートに上がれば、腰が抜けたようになり、みな言葉も出ずただゼーゼー言うだけ。
これを5セット繰り返した。ドルフィンスイムってなんて過酷なんだ…。そしてきっとイルカにとっては、訳の分からぬ生き物が大挙して追っかけてくる、恐ろしい体験…。
海に飛び込めばすべてが青に包まれる。目を凝らして底を見ようとしても見えない。ただ氷河湖の青のような水色がかった光が踊っている。おそらく海底はサンゴ砂なのだろう。自分の呼吸の音とバタ足の音だけが聞こえる。そして時に、手が触れそうなくらい近くをイルカがスーッと横切ったり、クルリとまわったりしている。なんとも不思議な感覚。知人は防水デジカメで見事にイルカの動画を撮っていた。持って来ればよかった…
今のドルフィンスイムができるイルカはハンドウイルカという種類で、今度は船と一緒に泳ぐハシナガイルカに会いに行く。船をハートロックに向ける。ハートロックとは断崖がクラックでハートの形に縁取られているところ。
ハシナガイルカの群れを発見。こんどは船でイルカを追っかける…
ハシナガイルカの群れにカツオ位の大きさの赤ちゃんイルカがいて、ボートの上は大騒ぎ。女性陣が赤ちゃんイルカの写真を撮ろうと、デジカメを片手で構えたまま、ボートの上を右に左にイルカの動きにくっついてバタバタしている。イルカを追うボート。ボートに追われるイルカを追う人間…
さんざんイルカを追っかけまわして疲労困憊した頃、昼食。イルカさん、お疲れ様でした。昼食後は父島を巽崎を越えて南から東に回りこむ。父島の東海岸は南の海岸よりさらに険しく切り立った溶岩の断崖絶壁。こちら側に父島を作った火山の火口があったとのことだ。
巽湾のあたりで頭上より竹さんの声。「マンタ!」
ボートのすぐ近くを大きなマンタがゆったりと泳いでいる。みんな、あわててシュノーケリングの装備を身につけ、また、必死の形相でバタバタ、ドボンドボンと海に飛び込む。
ああ、ここは深い。下を見ると底なしの青、いや闇だ。外洋の色ってこんな感じなんだろうか…。はっと我に返り、マンタを探す。目の前に畳が浮いている。いや、マンタが海面すれすれに泳いでいる。必死で追っかけたが、マンタは完全に我関せずで引き離されてしまった。ゆったりしているようで泳ぐのは速い。
反射でわかりにくいが写真には、水面からでたマンタの両ヒレが写っている。
必死のマンタスイムを終え、ボートはさらに北上し、兄島と父島の間の海峡、兄島瀬戸に入る。昨日、電信山歩道から見たた所だ。兄島のキャベツビーチでボートを係留しシュノーケリングタイム。ここはのんびりと泳ぐ。水深は1~5mくらいで、背が立つくらい浅いところに大きなテーブルサンゴや枝サンゴの森が広がっている。すごい。もちろん魚もうじゃうじゃいて、伊豆七島と小笠原にしかいないチョウチョウウオ、ユウゼンも見られる。本当に楽しい。でも寒くて歯がガチガチいってきた。シュノーケリングを堪能するにはGWはちょっと早いみたいだ。
そして午後4時、父島二見港に帰還。もうぐったり。でも楽しかった。ツアースタッフの皆さん、ありがとうございました。
シャワーを浴びて、スパークリングで一息ついたあと、夕日を見に行く。大村から上り坂をひたすら歩き40分で、夕日の名所、三日月山展望台に到着。大勢の人が座って日が沈むのを待っていた。そして、見事な夕日が…と言いたいが、例のごとく太陽は海面を覆う雲に吸い込まれ、いつ沈んだのか分からないような状況だった。
(次回に続く)
赤星山もおといこさんも地元で親しまれている山のようですね。調べてみたら行ってみた…