秋枯れの本白根山~草津温泉(2)
10/24 草津市街~草津白根ロープウェイ~本白根山~芳ヶ原~草津市街
(前回の続き)
のんびり温泉旅行に来たはずなのに、山があれば登ってしまう悲しいさが。天狗原ゲレンデで朝一番のバスに満員を理由に乗車拒否されるも、20分後に無事にバスに拾ってもらって、ゴンドラ乗り場まで乗る。冬はなんども乗っているゴンドラだが、雪のないときに乗るのは新鮮。
ゴンドラを降りてゲレンデわきから歩き始め樹林を30分ほど登ると、本白根山の火口に到着。こもだではゆるい登りが続いているが、暑くもなく、寒くもなく、風もなく、汗もかかずに歩くにはちょうどいい気候だ。
火口を周遊するように火口の内側の砂礫に登山道がめぐらされている。ヴェースビオ火山を思い出す(ここ)。広葉樹はすべて葉を落とし、干からびた藻のように岩屑にコマクサが張り付いている。秋枯れのさみしい景色。
火口を半周し、さしたる登りもなく標高2171mの本白根山山頂に到着。赤茶けた景色。夕方から雨ということで、空も雲に覆われて重苦しい。しかし、視界は良好で志賀高原横手山の鉄塔がはっきり見える。
南を向けば浅間山を始めとする信越の山々が…浅間山の左にちょこんと頭を出しているのは富士山ではないか。
火口をひと回りして、再びゴンドラ駅に向かう。途中、右手に小さな火口湖、鏡池が現れる。枯れ木に囲まれた殺風景な池…池の中に亀甲状の模様が見えると書いてあるが、柵があって池に近づけなかった。
物寂しい秋枯れの景色にも目が慣れてきて、いろいろなものが見えてきた。これは紅葉したブルーベリー、くろまめの木。熟した実はとても甘い。思わず一粒口に入れるが、発酵してドロドロになっていた…ペッ、ペッ。
道は葉を落とした樹林の中をどんどん下っていく。この赤い実はなんだろう?よく見るんだけど。これがまさに「ルビー色」なんだろうな。

白根レストハウスの駐車場はほぼ満車で、家族連れやバイクツーリングを楽しむ人でとても賑やか。
おわ~、なんだこの人、人、人。湯釜展望台へ向かう人が列をなして、遊歩道を登ってゆく。普通の観光客に混じって、熊鈴をリンリンさせながら歩く私はかなり場違い。
湯釜へは展望台への遊歩道以外にも登山道があるが、現在すべて立ち入り禁止。
これが白根山の火口湖、湯釜。赤茶けた山肌にぽこっと窪みができて、真っ白い牛乳が溜まっている感じ。
湯釜展望台は多くの人が押し合いへし合いの混雑だ。駅の雑踏を縫うがごとく人をかきわけ、最前列にでて人気を感じさせない静寂の写真をとる。

最近、このあたりで人が熊に襲われた。あちこちに注意書きが張ってある。
人も受難だけど、熊も受難だよね。
芳ヶ平へ向かう。レストハウスからハイキングコースへ一歩踏み出すと、たちまちそこは「見渡せば、花も紅葉もなかりけり」ついでに人もなかりけり、の静寂の世界。火山ガスに焼かれた荒涼とした景色が広がる。ただ、カモシカが一頭、草を食んでいた。
ナナカマドなど広葉樹の紅葉は終わっているが、カラマツの紅葉はまだまだ盛り。しかし、冷たい風に吹かれ、パラパラと葉を散らすカラマツは、とても物寂しい。
このコースはこの冬にスキーで来ている。(「青空を眺めながら待ちぼうけ」)そのときは、ここはだだっ広くてまぶしいほど明るい雪原だった。季節が変わると山の印象もがらりと変わる。
火山ガスが噴出する荒野をすぎ、平坦な草原になると芳ヶ平は近い。前回来たときに滑るはずだった(リフトが止まって時間切れになった)斜面が左手に見える。いい斜面だ。今思い出してもくやし~。
芳ヶ平ヒュッテに到着。人の気配なしと思ったが、小屋番が椅子に座ってひとり物思いに耽っていた。
風は冷たく、空は雨が降りだしそうだ。小屋の横のベンチに座って熱い茶を飲み一休み。ベンチの上のてんとう虫も突然の寒さに戸惑っているようだ。
芳ヶ平から一直線に草津の街に向けて下る。小屋から下ってすぐのところから、草津の町並みを一望できる。そして隣の尾根には紅葉色の大平湿原が見える。水芭蕉の季節にいちど行ってみたい。冬にスキーで滑るのもいいかも。
下るにつれてカラマツの森から、広葉樹の森へと移り変わる。するといろいろなきのこが目に付くようになる。これはうまそうだが…
紅葉の森の中を常布の滝展望台まで下ってきた。このあたりの森が一番色づいている。展望台と滝はかなり離れているが、その迫力は十分感じられる。

蟻の門渡りと呼ばれる細い尾根を越えると、明るい林の紅葉のトンネルが続く。ここで、とうとうポツリ、ポツリと冷たいものが落ちてきた。ザクザクと深い落ち葉を踏みしめ、先を急ぐ。
車道に出た。と同時に雨は本降りになって傘をさす。ゲレンデに戻る途中で橋を渡る。ここもすでにいい具合に色づいている。


まずはバスターミナルのすぐそばにある瑠璃の湯で汗を流す。のんびりつかるにはちょうどいい湯加減で、大きな窓から入ってくる冷たい風も心地よい。体から湯気を立てながら、歩いて宿に戻った。
(次回に続く)
赤星山もおといこさんも地元で親しまれている山のようですね。調べてみたら行ってみた…