四尾根で日が暮れる…~北岳バットレス(4)
7/18 お池小屋~五尾根支稜~下部フランケ~四尾根~北岳山頂~お池小屋
(前回の続き)
ピラミッドフェースの頭を右に巻くと、中央稜が見えてくる。北岳山頂から急傾斜で落ちる荒々しい大岩壁が目の前に迫る。巨大な怪獣の背を思わせる。
四尾根に出てから一時間半立つが、まだ2ピッチしか進めない。前に数パーティが詰っていて渋滞しているのだ。リードしてきて、ビレー点の直前の支点で前のパーティーが進むのを待っていたら、後から来たパーティーのトップが「ビール、ビール」と叫びながら、ランアウトして追い抜いて行った。こんなのあり?もう酔ってるのか?
マッチ箱手前の第二コルはちょっと広くなっている。前が全然進まないので、腰を落ち着けて休む。後続のパーティーも追いついてきて、皆で雑談しながらのんびり待っていた。ここは景色が良くて夕暮れ時の南アの山々や富士山がよく見えた。

マッチ箱のてっぺん、懸垂下降ポイントにやってきた。以前は「マッチ箱」は文字通り四角かったらしいが、今は崩壊して尖峰になっている。ここから懸垂下降してコルに降りる。そこで上部フランケからのルートと合流し、ますます渋滞がひどくなる…
中央稜が近くなる。ガスをまとって重苦しい威圧感がある。
マッチ箱のてっぺんへのルートは、両側が切れ落ちたリッジで中間支点も乏しい。高度感抜群。
枯れ木テラスに至るリッジ。ここを越えればもう終わりは見える。しかし、ルート上に人が詰って完全に動かなくなった。フラットソールを履き続けたつま先が痛い、水も残り少ない、そしてなにより北岳東面のバットレスにはとっくに日が当たらなくなっている。日没まであと30分。早く行ってくれ~!
後続パーティーがマッチ箱で懸垂下降をセッティングしている。もはや日差しは高嶺の稜線に残るのみ。日が暮れる。ザックからヘッドランプを取り出し、暗闇のクライミングに備える。
写真終了。なぜなら日が暮れてしまったから…枯れ木テラスまでは残照でかろうじてルート見えていたが、その上の残り1ピッチは完全に真っ暗。ライトの光と闇の中に延びるトップが張ってくれているロープを頼りに登った。登攀終了がちょうど20:00。四尾根に出てから5時間半、ほとんど待ち時間だった。動いてないのに疲れた…
夜の北岳山頂を踏み、チカチカと瞬く街の明かりと夏の天の川をメンバーとボーッと眺める。暑い一日だったがすでに風は冷たい。上着を羽織る。そしてよれよれと肩ノ小屋に下り、コーラーを一気飲みしてエネルギーを充填し、夜道を無事お池まで降りることができた。
テントに戻ると、先に戻っていた仲間が熱い茶を入れてくれた。は~、沁みる。
(次回に続く)
赤星山もおといこさんも地元で親しまれている山のようですね。調べてみたら行ってみた…