出発、鉄路2200キロ、極寒の長春へ~中国・東北、漠河の旅(3)
12/26 北京~長春
(前回の続き)
北京駅を始点として旅するときには、この北京中安賓館を利用する。北京駅まで徒歩5分の好立地で、清潔で値段も手ごろだ。
1階の電光掲示板で我々が乗る列車の待合室を調べる。中国では直接ホームに入らずまず待合室で待ち、列車がホームに入線してから改札が始まる。
ちなみに2階にはマックあり。
中国語と英語のアナウンスがあり、改札が始まる。改札は人でごった返し、押し出されるように改札を通り、列車の待つ2番ホームに流されてゆく。
夜明け前の薄暗いホームには2本の列車が停まっていた。
いずれも超特急、和諧号だ。
和諧号は海外の技術を導入して作られた高速鉄道で、これはそのなかでも、フランスのアルストム社によるCRH5型。和諧号には日本の新幹線の技術を導入したCRH2型などもある。
列車は定刻7:20に音もなくすべるように動き出した。いよいよ、北京から長春、ハルピンを経由して中国最北端、漠河へ向かう、鉄路2200キロの旅へ出発だ!
トイレットペーパー・ホルダーはあるが、やっぱり紙はない。
食堂車に行ってみたらただの売店だった。コーヒーを頼むと、目の前で紙コップにネスカフェを入れて、お湯を注いでくれた…10元なり。ネスカフェの小袋は1つ1元なんだけどね。
ここまでくると地面にはうっすらと雪が積もっている。車内の電光掲示板には外の温度が表示されていて、今は-12℃ほど。1時間に1℃ずつ下がっている。
もう4時間くらい乗ったと思うが、ずっと北海道的大平原の景色が続いている。驚くほど変化がない。たま~に、遠くに風力発電所の風車の列が見えたりすると、じっと見つめてしまう。
駅に停まるたびに、乗客が少なくなっていって、今は車両の座席は3分の1くらいしか埋まっていない。ラジオをガンガン鳴らしていた親子も降りた。車内は話をする人もなく、中国とは思えないほど静か。暖房の心地も良く快適だ。
車内に備え付けている鉄道局発行の雑誌をぱらぱらとめくる。そこにウルムチの複線化の記事があった。敦煌~ウルムチは乗ったことがある。なつかしい。北京からウルムチが現在の40時間から28時間になるそうだ。また、ホータンへの鉄道も建築中らしい。開通したら乗ってみよう。
北海道的景色が終わり、地平線に広がる大都市が見えてきた。長春にやって来た。
驚いたことに定刻13:31に長春駅に到着。せっかちな中国人を先に行かせて、のんびりと列車から降りる。と、駅員に早く行けとせかされる…
車内の温度は24℃だったが、今このホームの上は-16℃。その差40℃。瞬く間にズボンが冷たくなり、息をする鼻も痛くなる。ああ、つらい…
長春に着いて真っ先にしなければいけないこと。それは明日のハルピンへの切符を買うことだ。駅舎を出てすぐ右側にある切符売り場に向かう。幸い人民はほとんど並んでいない。希望する列車を第4希望まで書いて窓口に差し出す。
没有!(ない)
と言ってメモ帳をつき返された。終了…。でもあきらめるわけには行かないので、他の列車を調べようと売店で時刻表を探す。が、見つからない。
そこで、同じメモを持って別の窓口に行く。すると、座席がないが良いかと言っている(ように聞こえる)。寒さで手も顔も痛くなってきたので、なげやりに、何でもいいからくれ!と答えると、無事に立ち席券が買えた。めでたしめでたし。
駅からホテルまでは4kmほどの距離なので、散歩がてら歩いていくことにした。しかし、甘かった。
いきなり駅前の大通りを渡るのがおっかない。交通量が多いのに信号がない。おまけに道路が氷結していてスケートリンクのように滑る。人民は車を縫うように、凍った道路を渡っている。ちょっとでも滑ったらひかれそうだ…。
なんとか通りを渡りきったときには、疲労困憊、指先も冷たくて痛い。正面のデパートに逃げ込み、あてもなくふらふら歩いて体を温めた。
凍った歩道を転ばないように、ペンギンのように足をペタペタと路面とのフリクションを確保しながら歩く。右手に何か見えてきた…
ここは誰?私はどこ?これは何?
まぎれもなく「日本の城」である。
1932年、中国東北部が中華民国からの独立を宣言し、満州国を建国した。その満州国を操っていたのが、関東軍(日本帝国陸軍)であり、この建物はその関東軍司令部だったものだ。
なんでこんなところに日本の城をつくるかな~。あまりにもナンセンスだし、いかにも満州国は日本の傀儡です、と言っているようなものじゃないか。
ここは今は共産党吉林省委員会が入っている。門には歩哨がいて恐いので、通りがかりを装いこっそり写真を撮って逃げる。
写真を一枚撮るたびに、確実に指が冷たくなっていく。いつも街でしている手袋は非力だ。耐えられなくなったところで、またデパートに逃げ込んで体を温める。ツルツル滑る道をおっかなびっくり歩き、すぐに建物に逃げ込んで体を温めるので、なかなか前に進めない…
デパートのある通りは、ミニ表参道といった感じで賑わっている。帽子をかぶっていない人もいれば、素手の人もいる。これくらいでは人民はまったく寒くないようだ…
これも満州国時代の建物らしい。こんなのがあちこちにある。韓国は植民地時代の建物をかたっぱしから壊したが、中国は文化財にして、今でも大切に使っている。中国人はしたたかだ。
豚ばら肉の醤油煮と餃子と、砂糖がまぶしてある餅を食べる。豚の醤油煮はこってりとしたばら肉を醤油で甘辛く煮てあって、なかなかうまい。でも胃がもたれる。
砂糖餅はノーコメント…
暗いだけならいいが、ますます寒くなる。あまりの寒さにわき目も振らず、目を三角にして小走りで突き進む。すれ違う人民がなにごとかというように振り返る。
なんと、今日のホテルは長春No.2の名門飯店。五つ星だ。通常1000元の部屋がネット予約だと400元しなかったので、思わず予約してしまった。どんな部屋かな~、楽しみ。
床の絨毯はふかふかだが、テレビは中国のホテルでも最近少なくなってきたブラウン管だし、枕も小さいのが一つしかない。とても部屋が暗い。ホテルは高級になるほど暗いのか?
おまけにシャワーを浴びていたら風呂の栓が抜けなくなった…フロントに言ったら、さすがにすぐに治してくれた。
(次回に続く)
赤星山もおといこさんも地元で親しまれている山のようですね。調べてみたら行ってみた…