季節外れの吹雪~白馬岳大雪渓


6/3 猿倉~大雪渓~2400m~猿倉

さて、シーズン最後のスキーはどこに行こうか?いつもなら富士山だが、たまには違うところに行きたい。
今年は、残雪が多いらしいので北アもよさそうだ。じゃあ、大雪渓から白馬岳を往復しよう!

170602 猿倉荘

青々とした木々が初夏を思わせる猿倉に車を停め、猿倉荘に計画書を提出する。
天気もいいし、さあ、出発だ!と歩き始めようとした時、同行したベテラン氏が忘れ物をして車に取りに戻る。
小屋のまわりに芽吹く山菜を物色しながら、戻ってくるのを待つ。

170602 白馬尻までは夏道を歩く

白馬尻までは、ほぼ夏道を歩く。
青空に雪をまとった白馬岳が凛々しい。天気予報は、直前まであまり芳しくなかったが、昨日の予報では晴れになった。もう、すでに暑くて汗だくだ。
しかし、充実した一日になりそうだ。

170603 白馬大雪渓を登る

白馬尻でスキーにシールを貼って、雪渓を快適に登る。気持ちい~。
しかし、ベテラン氏は、仕事でお疲れなのかペースが上がらない。さらに、買ったばかりのビンディングに操作に四苦八苦して、頻繁に立ち止まっている。
後から来た登山者にどんどん抜かれる。午後になると落石の危険があるから、午前中のうちに登ってしまいたいのだが、、、

170603 白馬大雪渓の難所を登る

白馬大雪渓には難所が一か所ある。2200mくらいから約100m続く急登だ。ここは、雪が軟らかいときには雪崩が起き、固いときには、滑落事故が起こる。
今日は、下のほうがぐずぐずの雪だが、見上げるとやや灰色がかったつるっとした斜面が見える。おそらく凍っている。
そこで、スキーを背負い、アイゼンを履いて登る。

ここでも、ベテラン氏が、時々立ち止まって何かやっている。どうもアイゼンが外れるようだ。
聞けば、新しい靴を履いてきたのに、アイゼンの調整をしていないとのことだ。こんな急斜面の途中では、ザックも下ろせないので、とりあえずだましだまし登るしかない。
う~ん。ここまでのこともあり、相手が後輩ならば、躊躇なく、
「たるんでるぞ!事故を起こさないように気を引き締めて登れ!」
と言うところだが、先輩なので、とりあえず、
「アイゼンは、家で合わせておいてくださいね~」
と言っておく。
見上げれば、青空が消え、鉛色の雲が稜線を隠している。なんか、嫌な感じだ。

170603 急斜面を登ったところで敗退

案の定、急斜面の途中で、天候が急変する。
強風が白馬岳の稜線から吹き下ろす。斜面にへばりつくように耐風姿勢を取らないと吹き飛ばされる。顔に打ち付ける雪で正面を向くこともできない。ゴウゴウという風の唸りが聞こえるのみ。
6月になってこんな吹雪に遭うとは思ってもいなかった。

斜度が緩む2400m付近まで何とか登り、メンバーに撤退を伝える。
これ以上風が強くなると、撤退もしんどくなる。

荷物が滑り落ちないよう、かろうじて雪から頭を出している這松帯の上側の雪面にザックを下ろす。ザックからスキーを外し、シールをはがす。はがしたシールをしまうためにザックを開けると、雪が吹き込み、見る見るうちにザックの中に雪がたまってゆく。急がねば。

他のメンバーの様子を見る。
後輩は、私のすぐ横で作業をしている。吹雪にも動じない。
ベテラン氏は、少し離れた斜面の途中で作業をしている。と、そのとき、ベテラン氏のもとから、荒れ狂う吹雪の中、1本のスキーが、フォールラインに向かって真っすぐに滑り落ちて行った。そして、吹雪にかき消され、すぐに見えなくなった。ベテラン氏は、慌てて荷物をザックに突っ込み、残りの一本のスキーをザックに括り付け、スキーを追って足早に下りて行ってしまった…。

スキーを落とした…。事実上の遭難だ。
そして、下に登山者がいなければいいが…

今日のルートは、簡単に下山はできる。しかし、一般に、スキーを失えばペースが大幅に落ち、雪の状態やコースによっては危険な状態となる。そして、斜面を自由に落ちて行くスキーは、落石より危険だ。
私もスキーを始めたころ、先輩から、財布を落とそうがなにしようが、スキーだけは絶対に落としてはいけないと、耳にタコができるくらい言われた。当然、落とさないための技術や手順は体に染みついている。

やるべきことを守らなければ事故は起こる。

残された我々も、すぐにスキーを履いてベテラン氏を追いかける。視界がないので、慎重にゆっくりと滑る。
急斜面の落ち始めのところで追いついた。でも、エッジを効かせて立っているのがやっとのところで立ち止まって待っていたら、風で飛ばされて滑落する。
風の弱まる斜面の下部まで滑り降り、ベテラン氏を待つ。風に背中を向けてじっと待つ。寒い。共同装備のツエルトはベテラン氏が持っている…。これじゃあ、我々が遭難しちゃうよ。スキーの時は、ツエルトは個人装備にすべきか。

170603 白馬主稜方向からのデブリ

天気が変わると、山の表情もがらりと変わる。

170603 猿倉駐車場

途中で引き返してきたのに、予定より大幅に遅れて猿倉の駐車場に戻ってきた。
駐車場には初夏の陽があふれる。しかし、稜線は鉛色の雲の中。

帰りの車の中で、あの吹雪の中、小型飛行機が立山に墜落したことを知った。

(完)

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