ハリス・サドル越え~ニュージーランド、ルートバーン・トラック(6)


11/22 マッケンジー湖小屋~ハリス・サドル~ルートバーン・フラット小屋

前回の続き)

夜中に、山を鳴らす風の唸りが聞こえる。寒くて何度も目が覚める。そして、いつの間にか、テントを打つ雨の音がしなくなった。
外が明るくなったので、テントのファスナーをちょっと開けて外を除くと、木々の葉にはうっすらと白いものが積もっていた。
夏用のペラペラのシュラフじゃ寒いわけだ。

マッケンジー湖

ダウンを羽織り、冷たく湿った空気にガタガタ震えながらマッケンジー湖の湖畔に出る。
山には新雪が積もっている。
今日は、ルートバーントラックの最高点、ハリスサドルを越える。雪は大丈夫だろうか。

あまりの寒さ冷たさに、8時頃までテントの中でお茶を飲んだりうだうだしていたが、意を決してゴアアマを着て出発する。

マッケンジー湖の罠

道端の箱の中に卵が一つ。ポッサムの罠だろうか。
ニュージーランドには、もともと四つ足の獣がいない。しかし、人間とともにやってきたネズミやポッサムが、ニュージーランド固有の生き物を絶滅に追いやっている。それで、それらを駆除するために、そこかしこに罠が仕掛けられている。
もともと人間が連れてきたのに、人間て勝手だよな。

一般登山者向けのマッケンジー湖小屋

マッケンジー湖小屋に戻って来た。これは、一般登山者用の小屋。
また雪が降ってきた。やだな~。

マッケンジー湖湖畔の森

マッケンジー湖の湖畔から、すぐに森に入る。
砂利が敷き詰められたしっかりした道が、奥秩父のような苔むした森をぬって伸びている。
ルートバーントラックは、全体を通じて道はしっかり整備され、危険なところはない。

マッケンジー湖湖畔の森。シダ。

苔、シダ、地衣類、といったじめじめ系が豊富だ。

マッケンジー湖を見下ろす。

山腹を巻くように高度を上げ、森林限界線を越え景色が開ける。
正面には、新雪をまとった岩山が灰色の雲の切れ間に見える。足元には、マッケンジー湖と小屋を見下ろす。サイト場は森の中なので見えない。

ひゅうひゅうと冷たい風が吹き上げる。ばらばらと雪がゴア雨を打つ。
寒いよ~。防水手袋を持ってこなかったから、手が冷たいよ~。

雪に打たれる花

寒いのに花が咲いている。
日本では、花ざかりのお花畑に雪が降る、というシチュエーションは考えられない。
ゴア雨に積もった雪を払いながら、黙々と登る。

Ocean Peakの尾根を越えると虹が現れた

マッケンジー湖からの登り坂が終わると、道は山腹を巻いてオーシャン・ピーク(Ocean Peak)からの尾根を越え、北に向きを変える。
尾根を越えると雪がやみ、一瞬、日が差し虹が現れた。天気が回復するかな~。

ホーリーフォード谷の対岸の山々

ハリスサドルまで、延々と森林限界線上のトラバース道が続く。
雲が切れると、ホーリーフォード川(Horllyford River)が刻んだ深い谷の向こうに、氷河に囲まれた山頂を持つ山々(Darran Mountains)が連なって見える。上高地を見下ろし、槍穂を眺めながら、常念岳から蝶ヶ岳へ続く稜線をGWに歩いている気分になる。しかし、ホーリーフォード谷の2000mをちょっと超える山々は、穂高より何倍も大きく険しい。そう、上高地よりランタンバレーに似ているかな。
晴れていたら、どんなに絶景だったことか...。

ハリスサドルへのトラバースの途中で沢を横切る

この道は、オーシャン・ピークの山腹をほぼ1100mの等高線に沿ってつけられている。それで沢山の沢を横切る。しかし、どの沢も滝である。沢の源頭へと目を向ければ、そこは、オーシャン・ピークの急峻な岩稜となっている。どのピークでも登ろうとすれば、岩と氷河のミックスクライミングになるだろう。沢登りなんてとんでもない。

マウントクック・バターカップ

おそらくこれは、マウントクック・バターカップ(Mount Cook Buttercup)。手元のパンフには、世界で一番大きなバターカップだと書いてあるが、そもそも「バターカップ」ってなんじゃらほい?

オーシャン・ピークを振り返る

痛む足をかばいつつ、だましだまし歩く。後から来た登山者に追い抜かれ、とうとう私の後ろから登ってくる人がいなくなってしまった。
振り返れば、風で雲が流され、雪をかぶったオーシャン・ピークが現れた。寒々しい。

すれ違う人が私をじろじろ見る。なぜだ?
そこで、はたと気が付いた。
私は、バーゲンで買った、上着が緑で、ズボンが蛍光オレンジのゴア雨を着ている。そんな、自転車の反射板みたいな人は他にいない。みんな、アースカラーや黒っぽい地味なウエアを着ている。
この見通しのいいトラバース道で、私の姿は、蛍光色のもぞもぞ動く点として、遠くからも見えるのだろう...。

吹雪のハリスサドル

行く手を遮る小さな尾根を右手からまわり込み、階段を上ると、突然小屋が現れた。
ちょうど正午にハリス・サドル(Harris Saddle)に到着。標高1255m、今回の最高点。
峠をゴーっと風が吹きぬけ、ゴア雨のフードがばたつく。そして、周囲の景色が閉ざされるほど激しい雪が降ってきた。本格的に吹雪だ。
見る見るうちに地面は白くなり、フードや肩にも雪が積もってゆく。あわてて小屋に逃げ込んだ。

この小屋は、非常用の小屋で宿泊することはできない。
壁に沿ってベンチがあって、7、8人の先客が休んでいた。

次回に続く)

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