自分で下りれや!

白馬岳から祖母谷温泉に下山する途中、清水岳でのことだった。濡れた岩で滑って転びそうになり、それを変な姿勢でこらえて太もものの肉離れを起こしてしまった。肉離れは骨と筋肉の接合部がはがれてしまう怪我で、筋肉に力が入らなくなり、動かすと激痛がはしる。

そのときはリーダーだったので、引きつった笑みを浮かべながら、大丈夫、大丈夫と言って、テーピングで固定し下山を続けた。片足を引きずりつつ脂汗をたらしながら…。6時間後、祖母谷温泉に到着。テントを張って、立っているのもしんどくて中に倒れこんだ。痛めた右足をかばいながら下りたので、左足の膝が痛む上に靴ずれがひどかった。

翌日、やっとのことで琴平に下山。富山を経由して東京に戻ったときにはすでに日は暮れていた。怪我をした足は、足首あたりから太ももの付け根まで、内出血で真っ赤に腫れボンレスハムのようにパンパンになっていた。通行人が見てはいけないものを見てしまった、というような表情で傍らをすぎる…そりゃ~、肉離れをしたまま数時間歩き、2日もほっておいたのだから尋常じゃない。

そしてその翌日、やっと医者に行った。歩けないので、自転車に乗って左足だけでこいでいった。かかりつけの外科医は、「こんなの見たことない、血管炎かもしれない」とか言うので、「単なる肉離れです。肉離れの治療をしてください」と私が勝手に診察して、肉離れの治療をしてもらった。結局、普通に動かせるようになるのに3週間かかった。

なんでこんな痛い話をしたかというと、

「富士登山、携帯でSOS…有料知ると自力下山」(8/10 読売新聞)

はじめっから自分で歩いて下りれや!

最近では富士山に限らず、疲れて歩けない、とか、手を怪我したとか、まるでタクシーを呼ぶかのように救助を求める人が増えているらしい。

言い古されたことだけど、山は「自己責任」。そして、ほとんどの場合、登山とは単なる遊び。だから他人に迷惑をかけてはいけない。と言うことが登山の心得と教わってきたし、実際そう思う。

なので、救助を呼ぶのは自分ではどうにもならないときの最後の手段だ。命に別状がないならば、意地でも自力で下りる。もし、その心得を破ったらそれ相当の代償を払わなければならない。それは救助費用かもしれないし、事故報告書を書いた上で、ある程度の登山自粛かもしれない(山岳会では良くあるパターン)。

気軽に救助を呼ぶ困った人たちはどうしたらいいのだろう。野放しにしたら、本当に危ない人の救助に差し支える。やっぱり、救助費は実費負担にして、代償を払ってもらうしかない気がする。

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